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コラム

不動産 冠水被害を受けやすい宅地であることの説明義務はあるか?

2015年4月8日

テーマ:不動産

コラムカテゴリ:法律関連

東京高等裁判所平成15年9月25日判決は, 昨日のコラムで紹介したように,
①地盤が低く,降雨等により冠水しやすいというような場所的・環境的要因からくる土地の性状は,土地の瑕疵にはならないと判示しましたが,続いて,次のように判示しています。

②しかし,このような瑕疵に当たらないからといって,直ちにその販売業者に,上記のような土地の性状等についての説明義務がないといえるものではない。
③・・・当該土地建物の利用者に,日常生活の面で種々の支障をもたらす可能性があるからである。また,・・・売主が宅建業者としての地位にある場合,当該業者は,宅地建物の専門的知識を有するのに対し,購入者はそのような知識に乏しく,専門家を信頼して宅地建物を購入するのであるから,売主たる当該業者は,この面からも,売買契約に付随する信義則上の義務として,その取引物件に関する重要な事柄については,これを事前に調査し,それを購入者に説明する義務を負うというべきである。
④しかし他方,上記のような場所的・環境的要因からする土地の性状は,・・・当該土地の用途地域(工業地域,住居専用地域)などと異なり,簡便に調べられる事柄ではない。
⑤そうすると,当該業者が上記のような土地の性状に関する具体的事実を認識してい・・ない場合にもその説明義務があるというためには,そのような事態の発生可能性について,説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠あるいは業界の慣行等があり,また,そのような事態の発生可能性について,業者の側で情報を入手することが実際上可能であることが必要であると解される。
と判示した上で,この事件の場合

ア 売主は,全体土地を買い受けた際も,その付近の雨水の貯留状況等については何も説明を受けていなかった。
イ 土地に接する道路に雨水が貯留しやすく,それによって土地の一部が冠水するという土地の場所的・環境的要因に基づく性状について,宅建業者を含む販売業者に説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠や業界の慣行等があるとも認め難いし,冠水情報を,土地を造成し,分譲しようとする建築業者が容易に入手しうることを認めるに足りる証拠はない。
ウ売主が,冠水地区であることを認識しえなかったとしてもやむを得ないと考えられる。よって,売主に本件土地の前記のような性状について,控訴人に説明すべき義務があったということもできない。
と判示しています。
これも参考になるものと思われます。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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