相続と登記 9 遺留分減殺請求と登記
1,同族会社の経営問題
被相続人の個人会社の株式 (いわゆる自社株式) が遺産である場合,これを誰が相続するかは,会社を誰が経営するかの問題になりますので,この問題は,遺産分割の問題よりは,会社経営の問題になり,裁判所は,基本的には,タッチしません。
2,扶養や介護を巡る問題
父が亡くなり,相続が開始したが,母の扶養を誰がするかで,父の遺産の分け方が違ってくる,という場合がありますが,そのためであっても,裁判所は,審判で,相続人の相続分を変更することはできないので,タッチできない問題になります。
3,遺産である土地の境界問題や私道問題
親の土地と子の土地が隣接していて,親が存命中は問題にならなかった境界争いが,親の死をきっかけに生ずるということもあります。
また,子が親の土地を通行していたのが,遺産分割の結果次第では,通行できなくなるという問題もあります。
しかし,裁判所は,審判では,その解決は不可能です。
これは相続人間の話し合いによる解決又は地方裁判所での裁判以外に解決方法はなく,その話し合いがうまくいかない場合は,家庭裁判所は,その問題を無視して,審判によって遺産分割をしてしまいます。
4,金銭貸借問題
これもよく生ずる付随問題ですが,遺産分割とは無関係の問題です。
被相続人が相続人に対し貸金を有しておれば,その債権は,全相続人に,相続分に応じた可分債権として相続されますので,各相続人が債務者相続人に対し,その金額を請求するだけでよく,また,相続人が被相続人に貸金債権を有していた場合は,被相続人のその債務は,全相続人が,相続分に応じて可分債務として相続していますので,債権者相続人は,他の相続人に対し,その相続分に応じた債権額を請求するだけでよいのですから,遺産分割は,その問題を無視して進めます。
5,祭祀承継問題
祭祀を誰が承継するかの問題も,遺産分割とは無関係になります。これについて,相続分間に意見の一致が見られない場合は,別途,祭祀の承継者を定める審判を求めなければなりません。