遺産分割調停・審判からの排除決定について
1,前提問題
遺産分割の前提として,①遺産分割に参加している人が相続人であること,➁遺産分割の対象にされている財産が遺産であることなどが,当然に,要求されます。
実務では,特定の財産(例えば,妻名義の不動産や株式)が遺産であるかどうかが争いになると,そのままでは,遺産分割(協議・調停・審判とも)はできません。
このような前提問題は,調停や審判とは違う手続,訴訟で,争って確定させる必要があるのです。もっとも,最高裁判所昭和41.3.2決定は,遺産であることに争いのある財産があっても,家庭裁判所において,それが遺産であるか否かを判断して,遺産分割の審判をすることはできるとしていますが,訴訟で確定させないと,前提問題の本当の解決にはならないところから,実務では,前提問題が解決しない場合は,いったん遺産分割の調停や審判を取下げさせ,当該財産が遺産であるかどうかを訴訟で確定させた上で,新たに調停や審判を申立てさせることにしているのです。
2,中間決定
ところが,平成25年1月1日から施行された家事事件手続法80条は,「家庭裁判所は、審判の前提となる法律関係の争いその他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間決定をすることができる。」という規定を置きました。この制度は,過去にはなかったものです。
「逐条解説・家事事件手続法」(金子修編著・商事法務)260頁には,中間決定は,遺産分割の際に起こる遺産の範囲についての争いなどに利用されることも想定している書き方をしていますので,今後は,迅速な遺産分割の審判を目的として,中間決定がなされるものと期待されます。
なお,中間決定は,審判ではありません。審判以外の裁判です。
中間決定がなされた場合,それに不服な相続人からの不服申立は,その手続内では,認められていません(中間決定に対して即時抗告ができるという規定を置いていないからです)。
別途,訴訟を起こして,争う道はあります。