民法雑学 4 公立病院における診療債権、水道料金債権など自治体債権の消滅時効期間
Q 私は,母の成年後見人をしていますが,現在,母はいつ亡くなってもおかしくない状況下にあります。被後見人が亡くなると,私の後見人としての資格もなくなりますが,子として葬儀をしなければなりません。その費用に充てるため,今のうちに,母の銀行預金口座からお金を引き出しておくことはできますか?
A
葬儀費用は,葬儀を主宰する者(喪主)が葬儀の契約の当事者となることから,第一次的には喪主が葬儀費用を負担することになります。被後見人の財産から葬儀費用を支出することについては,推定相続人全員の合意があれば可能であるとされています(片岡ほか「家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務」121頁)。
被後見人が生前から葬儀の準備をしておくことは,被後見人の自己決定権の尊重の見地から認められるべきものとされ,後見人が被後見人の意思を尊重して,葬儀費用の準備のために被後見人の財産から一定の支出をすることは,一般的に被後見人にとって必要性が認められます。したがって,被後見人に葬儀費用の事前準備の意思があったとみられる場合は,可能でしょう。この場合は,被後見人の社会的地位,人間関係や交際範囲等から判断して,社会常識に照らして相当と認められる葬儀費用を事前に引き出すことができるとされています。(同書69頁)。
もっとも,葬儀費用を事前に引き出した場合,預かり金としてその他の金銭とは別に保管しておく必要があります。後見終了後2か月以内に管理の計算が完了すると,相続人への財産引き渡しまでの間,現金については年5分の割合による利息を付さなければならなくなるので(民法870条,873条1項),必要以上の現金を手元に置かない方がよいとされています(寺町東子「成年後見の実務」LIBRA,Vol.10・14頁)。