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借家 離婚により夫が退去した場合の妻の居住権

2014年12月17日

テーマ:不動産

コラムカテゴリ:法律関連

Q 私は夫が賃借したマンションで,夫婦親子で住んでいましたが,今般離婚し,夫がマンションから退去しました。すると家主から,私がマンションに住んでいるのは,借家権の無断譲渡になるので,立ち退いてくれと言ってきました。立ち退かなければならないのですか?

A 夫が借家人名義になった借家での妻の居住は,借家人である夫の履行補助者としての居住で,独立したマンションの占有者とはみられません。しかし,離婚に伴い,それまで借家人であった夫が借家を退去し,妻が借家に継続して居住する場合,離婚した妻の居住は,独立した居住になり,居住する権利がなければなりません。それは夫の持っていた借家権を貸主の承諾を得て譲渡してもらうことで取得できますが,貸主が承諾してくれない場合は,退去しなければなりません(東京地裁昭和42年4月24日判決) 。
離婚に伴い,借家権を,財産分与財産として,夫から妻に譲渡する場合もありますが,裁判所は,この場合は,賃貸人の承諾を得ることを条件として、妻に譲渡する旨の審判をしています(大阪家庭裁判所昭和37年10月30日審判)。
したがって,あなたの場合,貸主の承諾を得られない限り,マンションから退去するほかありません。

個人が借家人であって,その個人が法人成りしたような場合も,個人から法人に借家権が譲渡されたことになりますが,この場合は,通常借家の使用がそれまでとは何ら変わらないので背信性がないとして家主も立退きを請求できないのが一般的な考えです。しかし,あなたの場合は,借主が完全に交代することになりますので,原則として,退去せざるを得ないことになるのです。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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