必要は法なき所に法を生む (判例の意義)
誤解があったら,先に詫びておきたい。馬鹿にすんな。俺は弱者じゃあないぞ,という声が聞こえそうだからだ。
ここでいう弱者とは,労働者のことだ。労働者だから弱者というわけではないが,法律は労働者保護に厚いのは常識。その保護を厚くする理由をたどれば弱者保護というイメージになる。そこでとりあえず,弱者という表現にしたのだ。
で,我が輩,何が言いたいのかというと,賃金の支払いの遅れに対するペナルテイが高いということだ。
ひとつは,遅延損害金の割合が高いことで,ふたつめは,付加金が課せられることだ。
まず,遅延損害金についていうと,遅延損害金は,非営利の法人や団体の従業員の場合は民事法定利率の年5%,株式会社など営利企業の従業員の場合は,商事法定利率の年6%の遅延損害金が,いずれも給与支給日の翌日から起算して付くが,それが従業員が退職した後も未払いが続くと,退職の日の翌日からは,賃金の支払の確保等に関する法律6条1項によって,年14.6%もの高い遅延損害金がつくということだ。ひえ~。たけえな~。そう思うだろう。
もう一つは,倍額になるまでの付加金が付く場合があることだ。これは労働基準法第114条で定めていることで,裁判になればの話だが,①解雇予告手当(20条),➁休業手当(使用者の責めに帰すべき事由によるもの。26条),③時間外、休日及び深夜の割増賃金(37条)並びに④年次有給休暇中の賃金(39条6項)の支払に遅れがあったときは,未払額と同額までの付加金が課されるということだ。最悪で,倍額払いになるっちゅことだあ。
ここに教訓がある。
これらが問題になるのは,多くは,残業手当が支払われない場合だ。その場合,残業したかどうかが争いになることが多いが,裁判所は,形式基準で,残業の有無を判断することが多い。
要は,タイムカードに打刻された時刻を争うことは難しい。そこで,仕事が終わったのに,電車待ちのため会社に残っているような従業員には,仕事が終わった時点で退勤の打刻をさせることや,カミさんに家にいては邪魔だと言われて早出出勤するような従業員には,就業開始直前までタイムカードの打刻はできないようにしておくことだ。
因みに,賃金,諸手当の消滅時効期間は2年間,退職金の消滅時効期間は5年間だ。念のため。