一字違えば意味違う (相続放棄と相続分の放棄)
新築したばかりの高級マンションを買い、夢と希望を乗せて入居する。何年かして外壁タイルが剥離したなどということがあったら、たまんね~。しかし、実際にあるのだ。
タイル張の剥離故障は、剥離の発生時期により、初期故障と疲労故障に大別される。初期故障は、施工当初から何らかの原因により接着界面に十分な接着力が発現せず、施工後の劣化外力(日射、雨水、地震等)の作用に伴い剥離するもので、これは施工直後から数年の間に発生し、同時期に大量に剥離する場合が多いとされる。その原因としては、材料選択の誤り、工法選択の誤り、施工上(下地清掃、下地処理、モルタル混練、モルタル塗付方法等)の誤り等があるとされている。一方、疲労故障は、劣化外力の作用による温湿度変化等に伴い繰り返し生ずる接着界面の剪断応力により、接着界面が疲労し、経年により接着力が徐々に低下して剥離に至るもので、施工時の接着力に応じ、施工後数年から数十年の経過により、段階的、部分的に剥離を生ずるものであるとされている。
問題は初期故障だ。その故障が発見された時は、すでに瑕疵担保責任期間が経過しているという場合がある。その場合でも、ネバーギプアップだ。その時が建築時より20年が経過していない場合は、責任追及のチャンスがあるのだ。それは建築会社の過失責任を立証して不法行為(この時効期間は知った時から3年、不法行為の時から20年間だ)責任を問うのだ(最高裁平成19.7.6判決,東京地裁平成20.1.25判決)。
マンションの外壁にタイルを張る工事は、施工面であるコンクリート躯体を清掃した上で、これに吸水調整剤を塗布し、その後、下地モルタルを塗り付け、タイルを張るという手順で行われるものだが、下地モルタルを塗り付ける作業は、何回かに分けて、乾燥の時間を置いて行う必要があり,一回で厚く塗り付けると、コンクリート躯体との界面で剥がれやすくなる(要は初期故障が起こりやすくなる)。タイル張りに,安定した耐久性をもたせるためには、コンクリート躯体に薄くモルタルを塗り付け(これを「下擦り」という)、それが乾燥した後、モルタルを塗り付けことを繰り返す必要があるが,各材質には線膨張係数、乾燥収縮率に差異があるため、温湿度の変化によって、材質ごとに異なる動きを生じて接着界面に剪断応力が発生し、剪断応力が、接着力が最も弱い接着界面の接着力を上回ると、当該接着界面が剥離することになる,とされている。そのために,タイル張り工事は,各資材ごとの特質を考慮した施工の必要性が大きく,そのためには,各資材メーカーが定めた施工要領書に従い,また,「建築工事標準仕様書・同解説 JASS19 陶磁器質タイル張り工事」や「建築工事標準仕様書・同解説 JASS15 左官工事」に従い,施工をする必要があるが、これに違反した施工をし,完成後数年後くらいにタイルの剥離が生ずると過失が認定される場合がある(東京地裁平成20.12.24判決より。なお,同判決は,施工業者に重過失さえ認定している。)。
一の矢(瑕疵担保責任)を射ただけで射倒せなかったら、二の矢、三の矢(不法行為の立証)を射よということだ。