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民法雑学 秘密録音をすることの問題点(証拠能力と個人情報)

菊池捷男

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テーマ:民法雑学

Q 当社は,クレーマー対応の一環として,相手方に秘密で,相手方の会話をICレコーダーにより録音しておきたいと思います。
この場合,録音の内容は,証拠として有効になりますか?
また,個人情報保護法上問題はありませんか?

A 
秘密録音でも,その内容は,証拠としての能力を有しますが,個人情報の保護に関する法律に基づき,あらかじめその利用目的を公表しておくか,秘密録音後速やかにその利用目的を本人に通知又は公表しなければなりません。

1,秘密録音と証拠能力
会話当事者の一方が,相手方の同意を得ず,無断で会話を録音する行為を「秘密録音」いいます。
秘密録音の内容が,証拠になりうるか(証拠能力があるか)については,裁判例は,録音が「著しく反社会的な手段を用いて,人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは」証拠能力を否定し,そうでない場合は,証拠能力はある(東京高裁昭和52年7月15日判決)としています。
ですから,相手方の人格権を侵害するような違法な態様によらない秘密録音の場合,その内容は証拠能力を有します。

2,個人情報保護法上の問題
特定の人の会話内容は,必然的に,その人の個人情報になります。
個人情報取扱事業者が,個人情報を取得することは自由にできますが,個人情報保護法18条1項に基づき,「あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない」ことになっています。
 なお,秘密録音による個人情報の取得が,個人情報保護法18条2項に該当すれば,あらかじめ,本人に対し、その利用目的を明示しなければならないことになっていますが,平成20年3月25日付独立行政法人国民生活センター消費者苦情処理専門委員会小委員会の報告によれば,秘密録音は,18条2項には該当しないとの見解を明らかにしていますので,事前の利用目的の明示は必要ないことになります。
しかし,個人情報保護法18条1項の適用を受けますので,秘密録音をする場合は,それに備えて,ホームページなどで,「お客様から電話その他の方法で問い合わせがあったときは,後日のトラブルを避けるため,お客様との会話内容を録音させていただいております。」と公表しておくのがよいでしょう。

参照
個人情報の保護に関する法律
第18条1項 
 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
第18条2項
 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。

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専門家

菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

迅速(相談要請があれば原則その日の内に相談可能)、的確、丁寧(法律相談の回答は、文献や裁判例の裏付けを添付)に、相談者の立場でアドバイス

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