継続的契約の一方的な解約は許されるか?
Q 私は,このたび,農業協同組合の理事になり,理事会で発言したのですが,その発言内容の全部が議事録に記載されていました。これでは,安心して自由な発言ができないと思います。議事録には,理事の発言は全部書かなければならないのでしょうか?
A いいえ。理事会の議事録に書くべきものは,「理事会の議事の経過の要領及び結果」です。
理事の発言内容を全部書くことまでは,要求されていません。
すなわち,
農業協同組合法33条3項は「理事会の議事については、農林水産省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもつて作成されているときは、出席した理事及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。」と規定し,
農林水産省令である農業協同組合法施行令の80条は,1項で「法第33条第3項に規定する理事会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。」と定め,2項で「理事会の議事録は、次に掲げる事項を記載又は記録しなければならない。」と規定され,次の一号から七号までの事項を,議事録に書くことになっています。
一 理事会が開催された日時及び場所
二 (理事会招集の根拠規定)
三 理事会の議事の経過の要領及び結果
四 (特別利害関係のある理事の氏名)
五 会社法の「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。」という規定の準用により,出席した監事が述べた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
六 (出席理事監事等の氏名)
七 (議長の氏名)
あなたの質問は,理事会で理事が発言した内容はすべて議事録にかかなけれなならないのか?というものですが,
理事の場合は,監事の場合と違って,その発言内容を書かねばならない,ことにはなっていないのです。
上記五号は,監事が述べた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要を書かねばならない事になっていますが,これは,監事の職務の重要性によります。すなわち,監事は,農業協同組合法35条の5第1項によって「理事の職務の執行を監査する」職務が課せられ,また,同条3項で「監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。」義務があるためです。
理事の意見や発言の内容は,必ずしも,書くことは要求されているものではありません。しかし,書いた方がよい場合は多いだろうと思われます。ただ,理事の発言の中には,組合内部の機密や,理事又は職員の個人情報が含まれている場合もあるので,そのような情報漏れが生じないような記載にする配慮は必要です。
あなたの場合,理事会の議事録は,一般の組合員が自由に閲覧謄写できますので,そこに記載されたくない発言をするときは,あらかじめ,議長に,その旨と理由を述べ,議事録には書かないことを確認した上で発言をするのがよいと思います。
例えば,「次に述べることは,当組合の機密に属すること(又は他の理事や職員の個人情報に関すること)なので,議事録には記載(又は記録)しないでいただきたい。」などです。
参照:組合員の議事録の閲覧権
農業協同組合法35条1項
「理事は、理事会の日から十年間、理事会の議事録を主たる事務所に備えて置かなければならない。」
3項
「組合員は、組合の業務時間内は、いつでも、理事に対し次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、理事は、正当な理由がないのにこれを拒んではならない。
一 第一項の議事録が書面をもつて作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求
二 第一項の議事録が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を農林水産省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求」