不動産 公図の歴史
Q 当社は,市街化調整区域内の農地を転用目的で購入し、代金を全額支払いましたが,農地法第5条の許可が得られる見込みがないため、この土地の所有権の取得と開発行為は市街化区域に編入されるまで待つこととし、買主の権利を保全する目的で、仮登記を経由しています。
①当社のこの権利は、時効で消滅することがあるのですか?
➁ 消滅するとすれば,何年で消滅するのですか?
③ 時効にかからないようにする方法はありませんか?
A
1,時効により消滅します。
最高裁昭和50年4月11日判決は,「農地について売買契約が成立しても、都道府県知事の許可がなければ農地所有権移転の効力は生じないのであるが、売買契約の成立により、売主は、買主に対して所有権移転の効果を発生させるため買主に協力して右許可申請をすべき義務を負い、また、買主は売主に対して右協力を求める権利(以下、単に許可申請協力請求権という。)を有する。したがつて右許可申請協力請求権は、許可により初めて移転する農地所有権に基づく物権的請求権ではなく、また所有権に基づく登記請求権に随伴する権利でもなく、売買契約に基づく債権的請求権であり、民法167条1項の債権に当たると解すべきであつて、右請求権は売買契約成立の日から10年の経過により時効によつて消滅するといわなければならない。」と判示しています。
2,消滅時効期間は10年,貴社の場合は,商人であるので5年になります。
買主の「所有権移転許可申請協力請求権」は、債権ですので時効期間は10年ですが,不動産業者の場合は商人であるため、商法の規定で時効期間は5年になります(東京地裁平成5年12月21日判決)。
3,時効にかからないようにする工夫
消滅時効は,権利を行使することが出来る時から進行を開始することになっており,また,権利を行使出来る時とは,権利を行使するにあたって法律上の障害がなくなった状態を言う、とされていますが,市街化調整区域内の農地について、農地法5条の許可申請をしても許可を得ることが出来ないのは事実上の問題であって、法律上の障害にはなりません。しかし,例えば,売買契約書で,「農地法第5条の許可申請は市街化調整区域の指定が解除された後、速やかに行う」と記載し、市街化調整区域の指定が解除されない限り、時効が進行しないようにする方法などが考えられます。