民法雑学 最高裁の破棄判決例と囲繞地通行権
Q 我が家の洋服ダンスが古くなり、開閉ドアがぴっちりとは閉まらなくなりました。そこで、家具屋さんに来てもらい、修理してもらったのですが、今度は、締まり方がきつくなり、開けにくくなりました。そこで、思い切り力を入れてドアを開けたところ、勢いよく開いたドアに顔を打ちつけて怪我をしてしまいました。これは修理に瑕疵があることから起こった事故なので、家具屋さんに対し、
(1) 製造物責任法により損害賠償の請求をしたいと思いますが、できますか?
(2) もし製造物責任法で損害賠の請求ができない場合は、家具の修理契約の不履行を原因とする損害賠償の請求はできますか?
A できません。
(1)について
製造物責任法3条本文は、「製造業者等は、その製造、加工、輸入・・・をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」と規定しております。
ここで、製造とは、原材料に手を加えて新たな物品を作り出すことをいい、基本的には、工業的な大量生産・対象消費になじむような物の製造のことをいいます。また、加工とは、動産を材料としてこれに工作を加え、その本質を保持させつつ新しい属性を付加し、価値を加えることをいいます。
したがって、家具屋さんが、タンスそのものを製造した場合や、仕入れたタンスに別の材料を使って加工した場合は、製造物責任を負わねばなりませんが、タンスの修理は、製造や加工ではありません。ですから、タンスの修理業者に対し、製造物責任を追求することはできません。
(2)について、
家具屋さんは、あなたとのタンスの修理契約によって、タンスの開きドアをきれいに閉まるようにする契約を結んだので、次の2つの契約上の義務があります。
①1つは、瑕疵のない修理をすることです。
これが本来の契約目的になる義務で
②もう1つは、修理がうまくいかなかった場合でドアを開閉するとき、今回のような事故が生じ人を怪我させる可能性もありますので、そういう事故が起きないように安全に配慮する義務です。
これは契約に付随する義務です。
あなたの場合、家具屋さんに安全配慮義務違反を問えるかというと極めて困難と言うほかありません。
安全配慮義務違反は、その結果が予見できるときでないと成立しないからです。あなたの場合、修理の結果、ドアの開閉がきつくなることは予見できても、そこから、思い切りドアを開けようとする人がいて、ドアが勢いよく開いて、ドアをその人の顔にぶつけその人を怪我させるということは予見できないことだからです。
ドアを思い切って開ける等の、人の故意のある行動は、予見できないこととされているからです。