遺言執行者④ 相続財産目録調整義務続き➁
以下に、現在の傾向をかいてみます。
1-1,インカム・アプローチ(収益方式)
・特徴
この方式は、会社の収益や利益に着目して会社の株式を評価するもので、最も理論的な方法とされているが、反面、将来の収益予測という不確実な要素を計算に入れることから客観性に欠けるうらみがある、とされている。
次の方式がある。
⑴ 収益還元法
⑵ DCF(DiscountedCashFlow)法
1-2,インカム・アプローチ(配当方式)
・特徴
この方式は、株主への配当金を果実とみて、それを還元率で割って元本としての株価を算出する方法で、会社を支配する可能性のない株式の評価には適しているとされているが、会社のストックやフローの価値を考慮していない点が欠点になっている。この方式には、次の方式がある。
⑴ 実際配当還元法
⑵ 標準配当還元法
⑶ ゴードンモデル法
2,マーケット・アプローチ(比準方式)
・特徴
この方法は、上場している同業他社その他の類似する会社や事業・取引と比較することで株価を計算する方法で、評価の対象になる会社が上場会社に匹敵する規模である場合や、その株式が過去に実際に売買されたことがありその売買事例における株価が客観性を持つ場合は、有効な方式であるとされている。この方式には次の方式がある。
⑴ 市場株価法
⑵ 類似会社比準法
⑶ 類似業種比準法
⑷ 取引事例法
3,ネット・アセット・アプローチ(コスト・アプローチ・純資産方式)
・特徴
全体としての純資産方式は、会社の実質的な価値が算出できるので、経営の支配権が伴う株式の場合には、有効な方法とされているが、時価の考え方により、次の(1)と(2)の見解に分かれ、(2)の見解は、さらに①のⅰとⅱ、②のⅰとⅱに分かれる。
しかし、この方式は、会社を解散することを前提にしていること、及び、会社の将来の利益成長を考えていないことが短所になっているし、会社を支配できる見込みのない株式については現実的な評価方法とされていない。
反面、会社の業績が悪化し収益力の回復が見込めない会社や休業中の会社の株式評価に適している、とされている。
また、小規模で、事業継続を前提とする会社の評価としては、(2)の①の再調達時時価純資産法が適しているとされている。
(1) 簿価純資産法
・特徴
会社のストックとして静的価値を算出する方法の1つで、計算は、貸借対照表上の総資産から債務を控除した残高の純資産を発行済み株式総数で割り算した金額を1株あたりの評価額とする方法で、計算が簡単にできる。
(2) 時価純資産法
・特徴
簿価を時価に評価し直して修正した貸借対照表を基礎に評価する純資産法で、不動産、上場株式などについてのみ時価評価をする場合もあるが、時価の求め方による違いから、次のように評価法が分かれる。
①再調達時時価純資産法
ⅰ法人税相当額等控除再調達時時価純資産法
ⅱ法人税相当額等非控除再調達時時価純資産法
②清算処分時時価純資産法
ⅰ法人税相当額等控除清算処分時時価純資産法
ⅱ法人税相当額等非控除清算処分時時価純資産法
4,併用方式
・特徴
以上に述べた1ないし3の方式は、それぞれ良いとされる点、欠点とされる点があることから、そのいずれかの方式によるのではなく、これらの方式を組み合わせる(加重平均する)方式がある。
5,傾向としては、次のことが言えるようである。
ア) 過去の売買事例の有無
売買実例があり、その価格に客観性があるときは、評価額として採用されることが多い。
イ) 会社の規模
規模が大きく公開会社に準じる場合は比準方式の類似会社比準方式が採用されること多い。
ウ) 事業の継続性
事業の継続性の高い会社の株価は収益法が、事業継続の低い会社は純資産方式が採用されやすい。
エ) 会社経営支配の可能性のある株主の有する株式
純資産方式や収益方式が採用される傾向にある。
なお、その株式自体をみれば、会社支配はできないが、会社支配のできる同族グループに帰属している株主の株の場合も同じ評価になる、とされている。
オ) 経営支配のできない株主の有する株式
配当方式のウエイトが大きくなる。
(次回は、裁判例を紹介します)