相続税のお話し 7 代償分割に潜む落とし穴
Q 父が亡くなり、相続人の間で、遺産分割協議を始めたのですが、不動産や預貯金等の財産の評価では相続人間で合意ができたのですが、父が起こした会社(非上場で同族会社です)の株式の評価で合意ができず、遺産分割協議が暗礁に乗り上げています。このような同族会社の株式の価格はどのように評価するのですか?
A 現在のところ、確立した評価方法や評価理論はありません。しかし、多くの裁判例が集積されつつあり、また、評価法に関する理論の構築の試みもなされていますので、連載コラムとして、これらの裁判例や見解を紹介いたします。
まず、資料としては、
日本公認会計士協会経営研究調査会編「株式等鑑定評価マニュアル」(平成5年11月9日)日本公認会計士協会経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」(平成19年5月16日)が参考になると思います。
今回のコラムは、この「企業価値評価ガイドライン」からのコメントをします。
1,評価方法
⑴インカム・アプローチ(収益方式・配当方式・DCF法その他)
これは会社の現在及び将来の収益等から逆算して(資本還元して)会社の価値を算出する方法
⑵マーケット・アプローチ(比準方式))
これは、上場している同業他社その他の類似する会社や事業・取引と比較することで株価を計算する方法です。
市場株価法、類似会社比準法、類似業種比準法、取引事例法などがあります。
⑶ネット・アセット・アプローチ(コスト・アプローチ・純資産方式)
これは貸借対照表上の純資産から株価を算出する方法ですが、帳簿上の純資産を基礎とする「簿価純資産法」、簿価を時価に評価し直して修正した貸借対照表を基礎に評価する「時価純資産法」がありますが、時価純資産法にも、「再調達時価純資産法」といって、会社にある個々の資産を再調達するとした場合の価格(減価償却後のもの)を基礎に時価を出す方法(これにも含み益に対する法人税相当額を控除するかどうかで議論があったり、時価評価をする資産は土地や有価証券などの資産価値の高い資産に限るべしとする見解などがありますが。)や、「清算処分時時価純資産法」といって、会社を解体清算した場合の処分価格を基礎に株価を出す方法などがあります。
(以下は次回のコラムに続く)