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自治体がする契約 7 議決回避のための工期の分割が許される要件

菊池捷男

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テーマ:地方行政

仙台高裁平成16.12.22判決は、
①公共工事に係る工事の実施方法の決定は,予算の執行権限を有する普通地方公共団体の長が,財政状況,国等から交付される補助金の額や交付条件,公共事業の性質や実施状況,工事の必要性や緊急性,工事の実施場所や内容,住民らの要望等の諸般の事情を総合考慮して高度な経済的,政治的判断として行うものであるが,
②法96条1項5号は,「その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること」については,長でなく,議会の議決によるものとしている。その趣旨は,政令等で定める種類及び金額の契約を締結することは普通地方公共団体にとって重要な経済行為に当たるものであるから,これに関しては住民の利益を保障するとともに,これらの事務の処理が住民の代表の意思に基づいて適正に行われることを期することにあるものと解される。
③そうすると,長による公共事業に係る工事の実施方法等の決定が当該工事に係る請負契約の締結につき同号を潜脱する目的でされたものと認められる場合には,当該長の決定は違法であると解するのが相当である。

という一般論を述べた(注:この一般論は最高裁平成16.6.1判決による。つまりこの仙台高裁判決はこの最高裁判決の差し戻し審判決である)上で、さらに、
④本件3つの契約は元々は1つの契約としてこれを締結することについての議案を町議会に提出したが,否決された後,予定価格がいずれも議会の議決を必要としない金額にして、そのための設計変更をした上で,本件各契約を締結したという経過があること等の理由で、違法と判示しました。

⑤ただ、このような議会の議決を回避する方法によることが、
ア 契約にかかる工事を実施する高度の必要性があり,
イ その実施に不可欠で既に交付決定を受けていた補助金を利用するためには,本件工事を当該年度内に完了させるほかなく,工期の短縮等の手段として工区を3つに分割することが,本件工事の内容,性質,実施場所等に照らして合理的であったなどの特段の理由に基づくものと認められる場合は、違法ではない旨判示しています。

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菊池捷男(弁護士)

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