不動産 中間省略登記ができない理由
Q 売買契約における瑕疵担保責任期間は、何年ですか?
1,原則は、知った時から1年間、最長10年間(商行為の場合は5年間)
民法570条・民法566条3項は、瑕疵担保期間を「買主が事実を知った時から1年」
と定めています。
「知った時から1年」ということになると、買主が瑕疵の存在を知らなかったら、いつまでも瑕疵担保請求権は消滅しないのかという疑問が生じそうですが、瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行しますので、瑕疵の事実を知ったときから1年間を経過していないが、目的物の引渡しのあったときから10年間(商行為の場合は5年間)が経過しておれば、瑕疵担保による損害賠償の請求権は消滅することになります(平成13年11月27日最高裁判所判決)。
2,免責特約を結んだ場合
民法572条によって、「担保の責任を負わない旨の特約」つまり瑕疵担保免責約束を結んだ場合は、瑕疵担保責任を生じません。ただし、この場合、売主が知っているのに買主に告げなかった瑕疵については、免責特約の適用は受けません(同条但し書き)。
3,合意により、期間を伸ばすことも短縮することも可能
瑕疵担保期間は、当事者の合意により短縮することも伸長することもできます。
4,宅建業者の場合の制約
売主が宅地建物取引業者である場合は、瑕疵担保責任の期間について引渡後2年以上とする特約をする場合を除いて、買主に不利な特約はできないことになっております。これに反する特約は無効になります(宅地建物取引業法40条)。
5,消費者契約法による制約
また宅地建物取引業者でなくとも、法人が、民法で定める内容よりも買主である消費者に一方的に不利な特約を結んだ場合も無効になります(消費者契約法10条)。
6,品質確保法による瑕疵担保期間の伸長
新築住宅の売買の場合で、瑕疵が住宅の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものであるときは、住宅引き渡しの時からから10年間は売主が瑕疵担保責任を負い、これに反する特約で買主に不利なものは無効とされます(住宅の品質確保の促進等に関する法律88条)。この期間は20年以内であれば、特約で伸長することができます。(同法90条)
その政令とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令をいい、その第5条で、構造耐力上主要な部分とは、「住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるもの」とされ、また、雨水の浸入を防止する部分としは、「①住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具、②雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内部又は屋内にある部分」とされています。
6,商人間の売買契約における瑕疵担保期間は6箇月
商法526条1項により、商人が商人から不動産を買い受けたときは、引渡を受けた後6箇月を経過すると、売主に対し、瑕疵担保責任を追求することができなくなります。
ただし、3項により、売主がその瑕疵のあることを知っていた場合には、1項の規定は適用されません。
東京地裁平成18.9.5判決の事件は、買主が、機械等の解体業者が使用していた土地を購入したが、すぐには土壌調査をせず、土地の引渡しを受けた後6箇月以上経過して土地の土壌汚染調査を行ったところ、地中から、環境庁告示にかかる環境基準、環境省運用基準及び土壌汚染対策法の定める各基準値を上回る鉛及びふっ素が検出された(このような化学物質の存在は瑕疵になる)事件ですが、
判決は、
① 土壌汚染は土地上に一見明らかな形で存在していることは少なく、目視等の通常の検査では発見することが困難であるといえるから、同条にいう直ちに発見することが困難な瑕疵に該当する。
② 土地の引渡を受け6か月が経過した後には、買主は、売主に対して瑕疵担保責任に基づく請求はできない。
③ 商法526条1項は、その文言上、土地についての瑕疵を除外していないし、商取引における迅速性の確保という同条項の趣旨は、土地等不動産の取引にも当てはまるものである。
④ したがって、土地の土壌汚染についての瑕疵担保責任の主張にも同条項の適用があり、特段の事情がない限り、引渡し後6か月の経過によって買主は同責任に基づく主張をなしえない。
と判示しました。