賃借人が賃借建物内で死亡していたとき
アパートの家主が、賃借人Aから、他の賃借人Bによって平穏な日常生活が送れないような嫌がらせをされているので、嫌がらせを中止させてほしいという要請がなされたとします。こういう場合、家主(賃貸人)にはどのような責任があるのでしょうか?
1,賃貸人の義務
賃貸人は、賃借人に対し建物を使用収益させる義務を負っています(民法601条)。そのため,賃貸人は,その建物を使用収益に適した状態(居住に適した状態)に維持する義務があります。したがって,賃貸人は,Bの迷惑行為によりAにとってその建物が居住に適していない状態にまで至っている場合には,Aのために、Bに迷惑行為を中止するよう説得する義務と、それでもBが迷惑行為を中止しない場合は、Bとの建物賃貸借契約を解除してBを退去させる義務を負っていることになります。
東京地判平成24年3月26日は、賃貸人は、「迷惑行為に関する事実関係を十分に調査し,その上で迷惑行為が受忍限度を超えるものであることを確認し,かつ,そのことを訴訟において立証しうる証拠を獲得した場合には,平穏な状態に回復して賃貸人としての義務を果たすため,迷惑行為を行う賃借人に対し,賃貸借契約の解除をも視野に入れて退去を要請すべき義務を負っているというべきである。」と判示しています。
大阪地判平成元年4月13日は、賃貸人が上記義務を履行しない場合には,賃借人は,賃貸人に対し,債務不履行として、居室の円満な使用ができなかったことについての賃料の減額部分,引越費用の負担を前提とした慰謝料を損害として認めています。