相続税のお話し 7 代償分割に潜む落とし穴
Step 1 各相続人等(相続人・受遺者)の課税価格の計算
ア)相続又は遺贈により取得した財産の価額 + みなし相続等により取得した財産の価額 - 非課税財産の価額 + 相続時精算課税に係る贈与財産の価額(注:贈与時の価額) - 債務及び葬式費用の額 = 純資産価額
イ)純資産価額 + 相続開始前3年以内の贈与財産の価額(注:暦年課税に係る贈与に限る) = 各相続人等(相続人・受遺者)の課税価格(注:千円未満切り捨て)
*注 ここでは、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した人ごとに、課税価格を算出しますので、各相続人等の意味は、相続人と受遺者のことになります。
Step 2 相続税の総額の計算
ウ)各相続人等の課税価格を合計する = 課税価格の合計額
エ)課税価格の合計額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額
オ)課税遺産総額を、各相続人が、法定相続分で分けた場合の、各相続人の取得額を算出
カ)各相続人の取得額 × 税率 = 算出税額
キ)相続人ごとの算出税額を合計する = 相続税の総額
*注 この相続税の総額の計算では、相続人や受遺者が取得した財産の課税価格の合計額を、全相続人が法定相続分で分け合うことを前提にして計算します。
Step 3 各相続人等の相続税額の計算
ク)相続税の総額 × 各相続人等の課税価格 ÷ 課税価格の合計額 = 各相続人等の相続税額
*注 ここでは、相続税の総額を、財産を取得した相続人及び受遺者全員に、取得した財産の価額に案分して、振り分ける計算をするのです。
Step 4 各人の納付税額の計算
ケ)各相続人等の相続税額 + 2割加算(注①) - 相続開始3年以内の贈与で納付した贈与税額 - 配偶者の税額軽減規定による金額 - 未成年者控除 - 障害者控除 - 相次相続控除 - 外国税額控除 = 各人の控除後の税額(注:赤字の場合は0)
コ)各人の控除後の税額 - 相続時精算課税贈与に係る贈与税額 = 各人の納付税額
*注①の2割加算は、相続税額を2割り増やす計算ですが、配偶者、父母、子(代襲者を含む)についてはしません。ただし、養子は、2割加算の対象になります。ですから、孫が財産を取得する場合、それが子の代襲相続人として取得するときは、2割加算はされませんが、養子として相続したとき、及び、受遺者として遺贈を受けたときは、2割加算されます。
例示
【前提】
相続人・・・妻・長男、長女の3人(ただし、長男は成人に達しているが、長女は18才)
・相続財産・・・3億円
・債務・・・1800万円
・葬儀費用・・・200万円
したがって、
・課税価格の総額・・・2憶8000万円
・遺産分割の結果・・・妻は、債務・葬儀費用の負担額を除いた正味の価格で1憶5400万円相当の財産、長男は7000万円相当の財産、長女5600万円相当の財産を取得
・みなし相続財産、3年以内の贈与財産、非課税財産、相続開始時清算贈与・・・ない
これを前提に計算すると、
【計算】
⑴課税価格の総額は、相続財産3億円-債務・葬儀費用2000万円=2憶8000万円
⑵課税遺産総額は、2憶8000万円-基礎控除額(5000万円+相続人3名×1000万円)=2億円
⑶相続税の総額を算出するための計算
①2億円に対する法定相続分相当額は、
妻・・・1億円
長男、長女とも5000万円
②相続税の税率を適用すると
妻・・・2300万円
長男と長女は、各800万円
③相続税の総額は②の合計額なので3900万円
⑷相続税の総額を課税遺産額2憶8000万円の各相続人の取得額に応じて配分すると、
妻は、遺産分割で1憶5400万円(55%)、長男は同じく7000万円相当の財産(25%)、長女は同じく5600万円相当の財産(20%)を取得しているので、
妻の相続税額・・・3900万円×55/100=2145万円
長男は3900万円×25/100=975万円
長女は3900万円×20/100=780万円
⑸ここから相続人ごとの税額控除をすると、
妻の⑷における取得額1憶5400万円は、配偶者控除額(法定相続分相当額か1憶6000万円のうちの多い方の金額)である1憶6000万円より少ないので、相続税は課せられず、したがって、0円
長男は、税額控除はないので、975万円
長女は未成年者控除があるので、6万円(計算省略)が控除され、774万円になります。