相続と登記 9 遺留分減殺請求と登記
1 命旦夕に迫る
父が危篤の一歩手前にあり、命、まさに旦夕に迫れり。急ぎ、遺言書を作成されたし。と、長男の要請を受けたのは、昨日の午後のこと。当事務所では、2人の弁護士と1人の事務員が、すぐに、相談者の父親の入院先に、緊急発進。相談者の父親と会う。
2 死亡の危急に迫った人でも遺言書は作成できる
⑴ 遺言者が口述できる場合
民法976条1項は「疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。」と定めています。
⑵ 遺言者が口のきけない人である場合
また、2項では「口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。」ことになっています。
⑶ 遺言者が耳の聞こえない人である場合
さらに、3項では「第1項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。」ことになっています。
⑷ 危急時遺言書を書き上げた後の手続
さらに4項は「前3項の規定によりした遺言は、遺言の日から20以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない」、また、5項は「家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。」と定めていますので、家庭裁判所への確認請求の手続が必要です。
遺言書は、死亡の寸前まで、作成することができるのです。