相続相談 41 相続分の譲渡と贈与税
今回のテーマは、
弁護士が、ひとつの遺産分割事件で、複数の相続人の代理人になれるか?
というもので、
これも弁護士倫理の問題です。
1 日弁連弁護士職務基本規程28条3号
この規定は、弁護士が、「依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件」について職務を行うことを禁じた規定です。
その立法趣旨は、複数の依頼者相互の利害が対立し、弁護士が一方の依頼者のためにだけ傾注して職務遂行すると、他方の依頼者の利益を害する結果を招くことになるので、そのような事件の受任を禁じたのです。
2 複数の相続人の代理人になって、遺産分割協議をするとき
例えば、甲と乙と丙という3人の相続人の間で遺産分割協議をするのに、弁護士が、甲と乙2人の代理人になって職務を行うと、この規定に該当することになります。
しかし、日弁連は、「解説弁護士職務基本規程第2版」79頁以下の解説で、「形式的に利益が相反すると見える場合であっても、実体的に利益が相反しない場合や潜在的な利益相反関係はあるがそれが顕在化していない場合は、これにあたらない。」と解して、その具体的な例として、本テーマを取り上げています。
3実務
弁護士がする遺産分割の実務では、共同相続人間で遺産分割協議をする場合に、弁護士が複数の相続人の代理人になることについては、依頼者である複数の相続人全員が納得し、その相続人の間に遺産分割を巡る争いがないときに限り、複数の相続人の代理人になっています。
とはいうものの、遺産分割協議書を取り交わす段階では、1人の弁護士が代理人になるのは、依頼者である複数の相続人のうちの1人に限られ、他の依頼者である相続人は、代理人なしか、その弁護士の所属する法律事務所の他の弁護士が代理人になっています。
家庭裁判所での調停も、同じ方法でしています。