相続と登記 9 遺留分減殺請求と登記
Q 昨年、父が遺言書を残さないで亡くなりました。父は呉服商を営み、私は高校卒業後20年以上も父の家業を手伝ったのですが、最初の10年間は、ほとんど給与をもらいませんでした。父は、私が、このような働きをしたことを評価して、亡くなる少し前、私に、今まで家業の手伝いをしてくれたことに対する気持ちだといって、上場株式(500万円相当)を私に贈与してくれました。
ところが、父の遺産相続の話が始まったとき、共同相続人である兄弟から、私が生前贈与を受けたこの株式は特別受益になるので、遺産分割のときに、持戻し計算をするべきだと言いだし、たいへん困惑しています。そうしなければなりませんか?
A そうしなくてもよいでしょう。
遺産分割は、
①相続財産額に特別受益の額を加えてそこから寄与分額を引いた金額を相続財産と見なして、
②その「みなし相続財産」に、各相続人の法定相続分をかけて「一応の相続分」を算出し、
③相続人ごとに、「一応の相続分」-特別受益の額+寄与分の計算式で「具体的相続分」を算出し、
④相続財産を、その具体的相続分で分けるというものですが(詳しい解説は「相続ノート」第2章参照)、
あなたの場合、お父様の考えでは、寄与分を認めた上で、その代償に時価500万円の株式を贈与したというのですから、これは、寄与分見合い特別受益というべきものですので、その金額が妥当なものであるかぎり、特別受益については持戻しの必要はありません。ただ、その場合、寄与分は認められないことになります。