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著作権 7 ありふれた表現と創作性を備えている表現(ラストメッセージin最終号事件)

2012年10月18日

テーマ:著作権

コラムカテゴリ:法律関連

東京地判平7.12.18は、
 ある著作が著作物と認められるためには、それが思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であり(著作権法2条1項1号)、誰が著作しても同様の表現となるようなありふれた表現のものは、創作性を欠き著作物とは認められない。
 本件記事は、いずれも、休刊又は廃刊となった雑誌の最終号において、休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれたいわば挨拶文であるから、このような性格からすれば、少なくとも①当該雑誌は今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知、②読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明、③休刊又は廃刊となるのは残念である旨の感情の表明が本件記事の内容となることは常識上当然であり、また、④当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子、⑤休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明をすること、⑤同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨要望することも営業上当然のことであるから、これら5つの内容をありふれた表現で記述しているにすぎないものは、創作性を欠くものとして著作物であると認めることはできない。
つまり、「昭和57年12月号創刊以来、3年3ヶ月にわたって発行してまいりました小誌は、この2月号をもっていったん休刊し、近々、誌名・内容を刷新して再発行いたします。長い間ご愛読いただき、まことにありがとうございました。心から御礼申し上げますとともに、新雑誌へのご声援をよろしくお願い申し上げます。・・・(以下略)」は、ありふれた表現なので、独創性はなく著作物とは認められないが、その他の記事は、執筆者の個性がそれなりに反映された表現として大なり小なり創作性を備えているものと解され、著作物であると認められる。
と判示した。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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