相続税のお話し 7 代償分割に潜む落とし穴
Q 父が残した不動産について、遺産分割協議をした結果、長男の私がそれを相続することになりましたが、その不動産には、弟の債権者が、私たち相続人全員の法定相続分による相続登記をし、弟の持分について差押えをしていました。私は、その債権者の相続による不動産の取得を対抗できますか?
A できません。民法909条は「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と定めていますが、この但書により、第三者が権利を取得している場合は、その権利を害することはできないのです。
なお、この規定は、第三者が遺産分割より前に差押えをした場合の規定です(最判昭54.12.14)が、あなたが遺産分割によりその不動産を取得したことを登記していない間に、第三者が差押えをした場合でも、あなたは遺産分割でその不動産を取得したことをその債権者に対抗できません(民法177条・最判昭46.1.26)。
【判例】最判昭54.12.14
民法909条但書の趣旨は,相続開始後、遺産分割までの間に、共同相続人の共有持分について権利を取得すべき第三者を保護しようとすることにある・・・。
【判例】最判昭46.1.26
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものではあるが、第三者に対する関係においては、相続人が相続によりいつたん取得した権利につき分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものであるから、不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法177条の適用があり、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができないものと解するのが相当である。