相続税のお話し 7 代償分割に潜む落とし穴
Q 昨年、父が遺言書を残さないで亡くなりました。相続人は、母と兄と私の3人です。父の財産の中に、預貯金があったので、私は、私の法定相続分が1/4ですので、「相続ノート」56ページに書かれているとおり、直接銀行から父の預金の1/4の支払を受けました。
ところが、兄も母も、私がすでに銀行から支払を受けた預金も遺産分割の対象にすべきだと言って聞きいれません。私から、父の預金は遺産分割の対象にはならないことの確認訴訟を起こすことはできませんか?
A 高松高判平18.6.16は、下記の理由で、預貯金が遺産分割の対象財産ではないことの確認訴訟はできないと判示しています。
⑴ 可分債権は法律上当然に分割され、各共同相続人は、その相続分に応じた金額を単独で相続している。
⑵ しかしながら、共同相続人全員の明示又は黙示の合意がある場合には、可分債権を遺産分割の対象とすることは可能である。
⑶ 共同相続人全員が、可分債権を遺産分割の対象とすることに合意しているか否かの判断は、家庭裁判所が審判手続の中で、遺産の分割の前提問題としてなすことである。
⑷ したがって、可分債権が遺産分割の対象財産ではないことの確認を求めることは、共同相続人間での⑶の合意が存在しない(成立していない)という事実の確認を求めるものに帰着し、実体的な権利関係の確認を求めるものとはいえないし、そのような事実の確認が遺産分割をめぐる紛争の抜本的解決に資するものということもできない。