相続税のお話し 7 代償分割に潜む落とし穴
Q 父が亡くなった後の相続税の申告後、税務調査で、父が兄名義でしていた預金は、遺産であるとの認定を受け、相続税の修正申告をしました。
しかし、兄は、この預金は、自分のお金でした預金であって父の遺産ではないと言っています。この場合、私から、その預金が父の遺産であることの確認訴訟を起こすことは出来ますか?
A できます。
最判平元.3.28は、全相続人を原告又は被告とする訴訟(固有必要的訴訟)であれば、特定の財産が遺産であることの確認訴訟は提起できると判示していますので、あなたが原告になって、お兄さんとお母さんを被告として、お兄さん名義の預金を遺産だと確認してもらえる訴訟は起こすことが可能です。
なお、事実の確認を求める訴訟は認められません。確認訴訟は、権利の確認又は法律関係の確認を求める場合でないと認められないのです。
この遺産確認訴訟は、特定の財産が遺産(相続財産)であることの確認を求めるものなので、遺産という事実の確認に似ていますが、最判平元.3.28は、
①遺産確認の訴えは、事実の確認を求めるものではなく、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであるから、確認訴訟の対象になりうる。また、②その訴訟での原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象である財産であることを既判力をもって確定し、これに続く遺産分割審判の手続等において、当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の紛争の解決に資することができる点に適法性がある、と判示しているところです。
なお、あなたの場合、お兄さん名義の預金が遺産であることの確認訴訟は起こせますが、税務調査の結果、お父さんの遺産と認定されたことが、お父さんの遺産だということにはならないことに注意が要ります。
税務調査は、徴税のための認定をしているだけのものでしかありません。納税者は税務署と争いたくないと思って、調査結果を受け入れる場合もあるでしょうから、お兄さんが訴訟で争ったとき、あなたはお兄さん名義の預金は、お父さんの財産であることを立証しなければなりません。