相続相談 相続放棄と未支給年金の取得
Q 昨年父が亡くなりました。その後で、相続人である母と長男の私、それに妹の3人で、遺産分割協議をして、母が住んでいる自宅の土地建物は母が取得しました。母は父が生前自宅は母に与えると言ったと話してくれたからです。
ところが、その後、父が自宅は私に相続させるという遺言書を書いていたことが分かりました。
そうなると話は違ってきます。
「相続ノート」62ページに遺産分割協議が錯誤で無効になる事例が紹介されていますが、私の場合も、遺産分割協議は無効になるのではありませんか?
A 遺産分割協議は無効になると思います。
同じような事件で、遺産分割協議を無効と判示した、最判平5.12.16があります。
この判決は、
⑴ 遺言があることについて
遺言の趣旨は、遺産分割の協議及び審判を通じて可能な限り尊重されるべきものである。
⑵ 相続人の意思
相続人も遺言の趣旨を尊重しようとするのが通常であるから、相続人の意思決定に与える影響力は格段に大きいということができる。
⑶ 遺産分割協議を成立させない蓋然性は高かったこと
子が遺言書の存在を知っていれば、特段の事情のない限り、遺産分割協議を成立させなかった蓋然性が極めて高いものというべきである。
⑷ 遺産分割協議で母の意思を尊重したのだから、遺産分割協議は無効とは言えないとの反論に対し、
子が、亡夫から生前本件土地をもらったと信じ込んでいる母の意思を尊重しようとしたことがあっても、遺産分割協議をしなかった蓋然性を否定する理由にならない
⑸ 母に不動産を取得させても、近い将来自分たちが相続することになるとの見通しを持っていたのだから、遺産分割協議が錯誤で無効ということはできないという反論に対し、
そのような事情があったとしても、遺言の内容が相続人の意思決定に与える影響力の大きさなどを考慮すると、これをもって遺産分割協議をしなかった蓋然性を否定する理由にはならない。
と判示しました。