相続相談 41 相続分の譲渡と贈与税
Q 父が亡くなり、父の遺産である自宅の土地建物を、私と妹の2人で相続しましたが、妹より、自宅は要らないのでお金で支払ってくれと言われて困っています。私お夫も、自宅の1/2もの大金は持っていません。その場合でも、お金を支払わなければなりませんか?「相続ノート」60ページに書かれていることを、少し詳しく教えて下さい。
A いいえ。お金がない場合は、お金を支払うことを命ぜられることはありません。相続財産を一部の相続人が取得し、財産を取得した者から、他の相続人にお金を支払わせるという遺産分割の方法を、代償分割といいますが、これについては、次のような最高裁判所の決定(許可決定)があります。
すなわち、
最決平12.9.7は、原審の大阪高裁が、遺産を全部、相続人1人と包括受遺者1名合計2名に取得させ、この2名から他の相続人へ、審判確定の日から6月以内に、合計1億8000万円の代償金を支払わせる、という代償分割の決定(一審の審判の抗告審決定)をしたことに対し、
①家庭裁判所は,特別の事由があると認めるときは,遺産の分割の方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対し債務を負担させて,現物をもってする分割に代えることができる(要は、代償分割を決定することができる。家事審判規則109条)が,
②右の特別の事由がある場合であるとして共同相続人の一人又は数人に金銭債務を負担させるためには,当該相続人にその支払能力があることを要すると解すべきである。
③ところが、原審は,代償金の支払いを命じた相手の相続人が、命じられた金額を支払う能力があるとの説明をしていない。また、
④記録を精査しても、その相続人にその支払能力があることを認めるに足りる事情はうかがわれない。
⑤そこで、最高裁は、更に審理を尽くさせるため,この件を原審に差し戻すのが相当である。
と判示しました。
ですから、代償金の支払い能力がない相続人に、代償金を支払えと言う審判はされません。