交通事故 23 後遺障害① 自賠責が認めなかった後遺障害を認めた裁判例
1 保険約款
保険自由化を迎えた今、各保険会社は、保険の利便性を高め、種々の保険約款を設けている、その中の1つに、「損害賠償請求権者からの直接請求権」がある。多くは、対人損害賠償請求権者のために設けている。この約款は、自家用自動車総合保険(SAP)、自動車総合保険(PAP)、一般自動車保険(BAP)などに見られる。ただ、自家用自動車総合保険では、対物損害賠償請求権にも設けている。
2 損害賠償請求権者(第三者)のための契約
本来、保険契約は、契約者の利益のために結ばれるものであるが、この損害賠償請求権者のための直接請求権は、第三者である損害賠償請求権者のために設けた権利である。損害賠償請求権者とは、被害者(死亡事故の場合その遺族)、死亡又は死にも比肩すべき障害を負った被害者の父母、配偶者、子等固有の慰謝料請求権者である。
このような第三者の利益のためにする契約は「第三者のための契約」と言われ、第三者が「受益の意思表示をしたとき」に権利が発生するが、第三者である損害賠償請求権者が、この約款により、直接請求をしたときに、受益の意思表示があったとされる。
3 請求方法
損害賠償請求権者が、この約款により、加害者が加入している保険の保険会社に直接、損害賠償の請求をする場合は、加害者に対する損害賠償額が確定していなければならない。
そこで、訴訟では、次のような請求の趣旨を書いて、加害者と加害者の保険会社を共同被告として訴訟を起こすことになる。
請求の趣旨
被告A(損害賠償義務者)は、原告(損害賠償請求権者)に対し、金○○○○万円及びこれに対する平成○○年○月○○日(事故日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
被告B(保険会社)は、原告の被告Aに対する本判決が確定したときは,原告に対し,金○○○○万円及びこれに対する平成○○年○月○○日(事故日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。