交通事故 25 後遺障害③ PTSD(心的外傷性ストレス障害)
1 意味
被害者の過失は、過失相殺の対象になるが、「被害者側」と評価される者の過失も、被害者の過失と同視され、過失相殺の対象になる。最判42.6.27によれば、被害者と同視できる「被害者側」とは、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者」である。
具体的には、次のような者になる。
⑴ 親族関係上の身分
・監護義務者である父母(最判昭44.2.28)
・配偶者・内縁の配偶者(最判平19.4.24)
例えば、被害者その者には過失はなくとも、被害者を監護していた両親に過失がある場合、あるいは、配偶者が車を運転していて対向車と衝突し、その車に同乗していた被害者に損害が生じた場合、被害者には過失はなくとも被害者の配偶者に過失がある場合は、過失相殺されることになる。
⑵ 雇用契約上の身分
・被用者が運転する車に乗っていた雇用主から加害者への損害賠償請求では、被用者の過失は過失相殺の対象になる(大判大正9.6.15)。
3 被害者側であることが否定された裁判例
⑴ 独立した世帯を構える兄弟姉妹
・弟の運転する車に乗っていて事故死した兄の遺族から、加害者に対し損害賠償の請求をした件で、この事件の兄弟は生活関係を一体としているのではない、との理由で、弟の過失は被害者側の過失にはにはならないとして過失相殺が否定された浦和地判昭46.4.22、
・兄が運転する車に同乗していた妹が、既に結婚をして別世帯を構えていたケースで、兄は被害者側の者とはいえないとの理由で、兄の過失による過失相殺を否定した名古屋地判昭47.6.14、
⑵ 保母、子守を頼まれた近所の主婦等
・これらの者に過失があっても、被害者とは身分上、生活関係上の一体性はないので、被害者側の者にはならない(最判昭42.6.27)
⑶ 同僚、友人による好意同乗
この場合は、これらの者に過失があっても、被害者側の者にはならないので、被害者の過失と同視できない(最判昭56.2.17)。ただし、次の4の場合は過失相殺される。
4 被害者の過失と見られる場合
・共同でドライブを計画して交代で運転をしていた場合は、これに参加した者全員が、共同運行供用者とされるので、事故の時運転をしていなかったとしても、運転していた者に過失があれば、過失相殺の対象になる(東京地判昭44.11.28)。
・助手に無免許運転をさせていた者も同様(東京地判昭42.5.24)。
・友人と酒を飲み、友人が酒気を帯びて運転したときの友人の過失の場合も同じ(名古屋地判岡崎支判昭55.7.9)。