コラム
交通事故 7 休業損害金③ 会社役員
2012年5月21日 公開 / 2012年8月15日更新
1 役員報酬の内訳
役員報酬には、①労務対価部分と②利益供与部分がある。休業損害金計算の基礎となるものは①の労務対価部分である(東地判昭61.5.27)。
とはいうものの、現実に支払われた役員報酬のうち①と②をどういう基準で分かるかについては定説はなく、事案毎に、裁判所が、会社の資本、規模、売上額、事業内容、被害者の担当事務、事故後の被害者や会社の減収の有無、程度等を総合的に考慮して、その割合を決めることとされている。
2 裁判例
ITコンサルタント会社の社長の高度の専門性と経験、知識、事故後の会社の売上減少の額より、それまでの役員報酬の80%を労務対価部分とした裁判例(横浜地判平20.8.28)、不動産賃貸の仲介会社の社長につき役員報酬の100%を労務対価部分とした裁判例(神戸地判平20.6.24)がある。むろん、報酬の全額を労務対価部分としたものは多い。中には、50%しか認めなかった裁判例もある。)
ほとんど個人企業といってよい規模の会社で報酬額も自分一存で決めることが出来た上、交通事故の前後を通じて会社の売上や利益は大きくは変化がないことを理由に、賃金センサスの平均賃金しか認めなかった裁判例もある。
3 立証活動による差が大きい。
結局の所、役員報酬は①労務対価部分と②利益供与部分を分ける基準はなく、事案毎に判断される性格を帯びるので、立証活動により、その差が生じてしまうことになる。
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