交通事故 43 遅延損害金
1 修理費で問題になる点
① 車両の損傷部分
車両の損傷部位が、事故前からあったのか、事故によって生じたのかの争いが生じたときに備えて、損傷箇所の写真撮影(角度を変え、複数枚、全体・部分)そしておく。事故状況を詳しくメモしておく。
② 修理業者選定・・・被害車両について加入している任意保険に指定修理工場入庫特約が附帯されている場合(被害車両の修理を保険会社が指定する指定修理工場で行うことで、車両自体の修理費用とは別に、臨時費用に関する保険金の支払いがなされる特約)、同特約の適用を受ける場合は、指定修理工場で修理をする必要がある。
③ 修理費用の額が相当か?
相手方任意保険と、どこで修理してもらうかを事前に合意しておくとよい。
2 修理不能と損害額
修理費用が、事故当時における車両の時価と事故車両の売却代金との差額(買換差損)に買換処理用を加えた金額をを上回る場合は、経済的に修理不能とされ、この場合に損害として認められるのは、買換差額と買換費用の合計額が限度になる(東京地判平15.8.4)。
⑴ 事故当時における車両の時価
事故当時における車両の時価は、一般には、事故車両と同一の車種・年式・形・同程度の使用状態、同程度の走行距離等の車両を中古車市場で取得する価格をいう。これはオートガイド社自動車価格月報(レッドブック)や中古車価格ガイドブック(イエローブック)等が参考になるが、購入から日が浅い中古車両について、実際の購入価格から定率法による減価償却をして時価を算定した例(東京地判平14.5.7)もある。同種車両の販売事例や事故車両の実際の購入価格などを参考に、イエローブックでは245000円だが、時価は修理費用570000円を下回らないとされた例もある(東京地判平16.4.22)。同判決は、中古車価格ガィドブヅクでは被害車両の価格は245、000円程度だが、修理費用見積額は572、250円のケースで、「車両の時価額は、同種車両であっても、車歴・使用月数・走行距離・整備状態等によって異なるところ、中古車価格ガィドブヅクは、市場情報を参考に平均的な中古車価格を予想したもので(同ガイドブックの「まえがき」参照。)、通常の走行距離を前提とする価格であると考えられるが、被害車両の登録は古いものの、走行距離は3万km前後と、初度登録から12年以上経過している車両としては極めて短い走行距離であると評価すべきことからすれば、中古車価格ガィドブヅクをもって被害車両の価格を認定することは相当ではない。」・・・「他の証拠で認められる被害車両と同種車両の中古車市場の価格は、①68万円(走行距離4万8800km。②69万円(走行距離12万3600km)③38万円(走行距離9万5400km)、④90万5000円(走行距離4万9000km)⑤49万8000円(走行距離5万6000km)。甲四の八)と、34万円から90万5000円までの幅があるが、被害車両よりも年式が古く、走行距離が相当程度多い車両あるいは年式が近く、走行距離が相当程度多い車両65万円ないし90万5000円で販売されていることが認められる・・・これらの事情を総合考慮すると、被害車両の本件事故当時の時価額が、修理に要した57万2250円を下回るものと認めることはできない。したがって、被害車両の修理費用相当額である572、250円を、本件事故と相当因果関係のある損害として認めるのが相当である、と判示している。
⑵ 買換費用とは
事故車両と同一の車種・年式・形・同程度の使用状態、同程度の走行距離等の車両をを中古車市場で取得する場合に必要とする費用に、事故車両の廃車に要する費用+事故車両の自動車重量税も事故車両
4 全塗装か部分塗装か?
通常の車両は、部分塗装まで。高級車両は、全塗装が認められる場合がある。
新車購入2年後のキャデラック・メルセデスベンツ500SLなど
5 パネル交換か板金粗相か?
板金塗装で十分だと考えられる傾向にある。