間違えやすい法令用語4 許可・特許・認可・免許
これは法令用語ではありません。一般用語でもありません。専門家の間でのみ使われる専門用語です。
1 地方自治法の中の用語の一例
地方自治法142条は「普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者・・・の・・・取締役・・・たることができない。」という兼職禁止の規定を置いています。議員についても同じような規定がありますが、これらの規定により、普通地方公共団体の長(都道府県知事や市町村長)や議員は、その自治体と請負契約を結んでいる会社の取締役であってはならないことになります。
2 固有概念と借用概念
この規定にある「普通地方公共団体」という用語は、行政法分野の固有の概念ですが、「請負」という用語は、民商法分野の用語を借りてきたものです。
借用概念とは、この場合の請負という用語のように、他の法分野から借りてきた用語をいい、固有概念とは、その法分野での固有の用語をいうのです。
3 民商法分野での固有概念である「請負」の意味
民法632条は「請負」の意味を、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約すること」と規定しています。そして、民法643条は「委任」の意味を「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾すること」と規定しています。
つまり、民法では、請負とは、結果を出すことで報酬を支払う契約のこと、委任とは、結果を出さなくとも、頼まれたことをすると約束することですので、意味は違うのです。
4 「請負」が借用概念として使われるときの意味
前述の地方自治法142条で言う「請負」は「委任」を含むものと解釈されています。
ですから、自治体と委任契約を結んでいる会社の取締役も、自治体の長や議員にはなれないのです。行政法分野では、税法関係などでも、「請負」は「委任」を含むと解されることが多くあります。
5 では、同じ法律用語(概念)が使われていても、法律あるいは法分野によって、意味は違うのか?
そうではありません。多くの場合、同じ用語が、固有概念として使われるときと、借用概念として使われるときとで、意味が違うことはありません。意味が違うとなると、法的安定性を欠いてしまいますので、意味は同じであることが当然に要請されるからです。
しかし、それにも拘わらず、法には法の目的や趣旨がありますので、借用概念が、ときに、前述のような違った意味を持つ場合があるのです。