間違えやすい法令用語 28 「・・・の日から○日間」・「・・・の日から起算して○日間」
節税・脱税・租税回避という言葉は、法令用語ではありません。一般用語ですが、ここに解説しておきます。
1 節税
節税とは、それを利用すれば税金が安くなる、あるいは課税が繰り延べになるという納税者に有利になる制度を利用することです。
例えば、所有期間が5年以内の資産を譲渡した場合の短期譲渡所得はその全額が所得税の課税標準になり、所有期間が5年を超えている場合の長期譲渡所得はその1/2が課税標準になる(所得税法22条2項2号、33条3項2号)ので、所有期間が5年を超える状況になるのを待って資産を譲渡するような場合、あるいは、土地を収用され補償金を得た場合、そのお金で一定の資産を買えば、課税が繰り延べになる(租税特別措置法33条等)ので、この買換制度を利用して買換え資産を購入するような場合です。
2 脱税
脱税とは、正直に事実を言えば、課税される事実(取引や状況。これを「課税要件事実」といいます)があるのに、課税を避けるため、そのような課税要件事実が無かったかのように装うか、課税額を少なくするために過小な表示をすること、例えば、1億円で土地を譲渡すれば、それに見合う譲渡所得課税がなされるので、5000万円の売買契約書を作るなどです。
要は、課税要件の全部又は一部を隠蔽することをいいます。
3 租税回避
これは、課税要件を隠蔽する脱税ではありません。
また、本来法が予定している節税でもありません。
租税回避とは、本来予定している法形式ではなく、しかし合法的な法形式をとることで、税負担の回避又は減少を図る行為をいいます。
例えば、土地を譲渡すれば、売買代金は得られるが、一方で多額の譲渡所得が発生するという場合で、それを避けたいと考える土地所有者甲がおり、それに協力する買主乙がいるいとします。
この場合、土地の売買目的は、買主乙にとっては土地を未来永劫にわたって使用収益すること、売主甲にとっては土地の時価に相当する金額を得ることですので、この目的を達成するには売買契約を結ぶのが最もよい法形式です。
しかし、売買契約では譲渡所得課税が避けられないので、それを避けるために、合法的な法形式はないかと探すのです。
そして、そのような法形式として、
①土地の賃貸借契約を結ぶことで、乙に土地の使用収益の権限を与える。
②金銭消費貸借契約を結ぶことで、甲が土地の時価に相当する金銭を取得する。
③ そして、前記経済目的を達成させるため、この2つの契約に様々な特約をつけるのです。例えば、賃貸借期間は超長期、①の契約の地代は②の契約の利息と同額、支払い方法は相殺による。契約は甲乙いずれか一方が希望する限り更新する等です。
なお、租税回避行為については、税法上も効果が認められるのか?という議論がありますが、このことは、いずれまたの機会に解説します。