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老朽建物についての貸主の修繕義務の基準

菊池捷男

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テーマ:不動産法(賃貸借編)

問題
 長い期間、建物を賃借しているうちに、その建物が老朽化していくことがありますが、その場合、家主には、どの範囲で、修繕義務が生ずるのか?という問題があります。

この問題については、裁判官が判例・学説の動向をまとめた評釈(判例タイムズ790号68頁)を書いていますので、参考になります。
同評釈とそこに引用された東地判平2.11.13は、上記のような老朽建物についての家主の修繕義務については、
① 絶対的な基準はなく、
② 当該建物の経済的価値、賃料の額、修繕に要する費用の額等をも考慮に入れて、契約当事者間の公平という見地からの検討も加え、相対的に決せられることになる。
③ 一般論として、屋根、壁、柱、土台等建物の主体部分の破損は、借家の利用を不可能にするかあるいは著しい困難にするおそれがあるから、これについては原則として賃貸人の修繕義務が認められるものであろうが、それ以外の破損については、修繕義務の存否の判断は微妙になるものと思われる(裁判例では、「それ以外の破損」については、修繕義務はないとされている)。
④ ただし、屋根、壁、柱、土台等建物の主体部分の破損であっても、老朽の程度が大きく、改築に近い大修繕をしなければならないような破損であれば、修繕義務はない。
ということになります。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

迅速(相談要請があれば原則その日の内に相談可能)、的確、丁寧(法律相談の回答は、文献や裁判例の裏付けを添付)に、相談者の立場でアドバイス

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