民法雑学 4 公立病院における診療債権、水道料金債権など自治体債権の消滅時効期間
法の適用とは、事実に法を適用することです。
法は、現に存在する法ですので、事実に法を適用する時は、その時の法を用いる事になり、その意味で法は不変です。
事実も、本来、不変のはずですが、調査の仕方で、事実は変わります。
一体、事実って何でしょうか?
ここでA弁護士の話しをします。
ある法人が、職員を解雇しました。
その後、この法人は、解雇された元従業員から解雇無効を理由とする地位保全の仮処分の申立がなされ、A弁護士にその事件を委任しました。
そのときのことです。
この法人が従業員を解雇した理由は何か?が当然A弁護士は問題にしました。
A弁護士の頭の中味です。
法は、労働契約法、労働基準法などがあり、これはむろん不変である。
しかし、解雇理由となった事実は、実は、調査の仕方で変わるのだ。さて、相談に来た幹部連中の語る事実とやらは何か?
4~5名の幹部の話は、「解雇された従業員は、勤労意欲に乏しく、協調性がない。あんなことがあった、こんなことがあった。だから解雇した。」というような、抽象的で、かつ、評価的な話しばかりで、A弁護士には、この従業員が何をしたのかがさっぱり分からないという有様でした。
これもA弁護士の頭の中味です。
こんな幹部連中の話をまとめて文章にすると、裁判では負けてしまうわい。こりゃだめだ。現場へ行くべえ。
その後、A弁護士は、その法人へ行ったのです。
そこで、解雇された従業員の勤務態度や、その勤務態度故に蒙った他の従業員の被害の数々を、多くの従業員から、ひとり一人具体的に聴き出したのです。そこで浮き彫りになった事実の大半は、最初にA弁護士を訪ねた幹部連中も全く知らなかった事実だったのです。
そこで、A弁護士は、その法人の他の従業員の多くから、直接経験した事実や、目撃した事実を文章に書いてもらったのです。
むろん、裁判でA弁護士が勝訴したこと言うまでもありません。
事実の発見は、本当に、むつかしいものがあります。
事実は、時間をかけ労力をかけないと、発見できないことが多いのです。
事実を本当は把握できていない幹部連中から、しかも、わずか1時間か2時間で、彼らがのいう“事実”を聴いても、それは事実とは限らないのです。
我が法律事務所では、ときどき、弁護士が、現在問題になっている案件を理解するために、依頼人、多くは会社や法人を訪問し、ときに半日、あるいは1日、そこにいて、その会社の業務を学ぶことをしています。ときにその会社の取引先まで足を運ぶこともいたします。
百聞は一見に如かずと言いますが、それをすると、分からなかったことが分かるということが実に多いのです。そうなのです。事実を知り、その事実を正確に表現できるようにするためです。