賃借人が賃借建物内で死亡していたとき
Q1 賃借中の建物が競売になったとき、新所有者に、建物賃借権の主張が出来ますか?
A 建物に最初の抵当権設定登記がなされるより前から賃借して建物の引渡を受けているときは、新所有者に建物の賃借権を主張できます。正確には、対抗できます。しかし、最初の抵当権の設定登記の日より後で賃借したときは、対抗できません。
Q2 建物の賃借権が対抗できないときは、すぐに退去しなければならないのですか?
A いいえ。6箇月間明渡しが猶予されます(民法395条)。この6ヶ月間というのは、新所有者が競売代金を納付したときから数えられることになります。
Q3 建物の新所有者は、その明渡猶予期間建物の住まわしてやるのだから更新料を支払えと言っていますが、更新料を支払う義務はあるのですか?
A ありません。明渡猶予期間というのは,賃貸借契約の延長ではありません。新所有者との間に賃貸借関係はなく,ただ単に明渡しが猶予されているだけなのです。従って,新所有者との間で賃貸借契約の更新をすることにはなりませんので,更新料を支払う義務はありません。
Q4 賃料はどうですか?
A 賃料ではなく、賃料相当の損害金ですが、これは支払う義務はあります(民法395条2項)。この賃料相当額とはそれまで支払っていた賃料と同額で問題ありません(東京地判平成22年6月14日参照)。この支払も、買受人が代金を納付した時からの分です。
Q5 退去するときは、新所有者に、敷金の返還を請求できますか?
A できません。
新所有者との間に賃貸借関係はありませんので,新所有者に敷金の返還義務も発生しません。この場合,旧建物所有者に敷金返還を請求することはできます。
Q6 退去するとき、引っ越し費用は請求できますか?
A できません。