民法雑学 4 公立病院における診療債権、水道料金債権など自治体債権の消滅時効期間
1 問題
税務調査への協力(国税徴収法141条、地方税法26条等)
労働基準監督署からの照会(賃金の支払の確保等に関する法律12条等)
警察・検察からの捜査協力の要請(刑事訴訟法197条2項)
に対し、
会社が、本人の同意なくして、
顧客情報あるいは従業員情報を開示してもよいか?
開示すべきか?
開示を拒否してもよいか?
開示を拒否すべきか?
2 個人データの第三者への提供には本人の同意が必要、が原則
会社が、個人データを第三者へ提供するには、個人情報保護法23条により、本人の同意が必要です。顧客情報も、従業員情報も、個人データですから、これらを税務署などに提供する場合は、原則として、本人の同意を得なければなりません。
3 例外の1
個人情報保護法23条1項4号は
「国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。」は、本人の同意なくして、第三者への個人データの提供は許されています。
4 税務調査等への協力に対する法の扱い
税務調査への協力、労働基準監督署からの照会、警察・検察からの捜査協力の要請に応じて、顧客情報を提供することは、個人情報保護法23条1項4号を満たす場合に限り、許されています。
5 義務ではない
しかしながら、会社には、税務調査への協力、労働基準監督署からの照会、警察・検察からの捜査協力の要請に応じて、顧客情報を提供する義務はありません。
6 回答
次の手順を踏めば、協力してもよいでしょう。
ア 個人データの第三者への提供が、原則として、本人の同意を必要としている個人情報保護法の趣旨を考え、警察などから協力要請があったとき、警察等に、本人の同意を得ることを求めるべきです。
イ 警察等が、「本人の同意を得ようとすると捜査していることが本人に発覚して捜査に支障が生ずる。」というときは、その理由を質問すべきです。
ウ その場合、警察等が、捜査の秘密を楯に、捜査等に支障を及ぼす理由を教えてくれないときは、会社の方で、「本人の同意を得ることにより捜査等支障を及ぼすおそれがある」と判断できるかどうかを検討する必要があります。
エ 検討しても、「本人の同意を得ることにより捜査等支障を及ぼすおそれがある」と判断できないときは、警察等の協力要請を拒否しなければなりません。
これは、個人情報保護法23条1項4号の規定に適合しないためです。
オ 検討した結果、「本人の同意を得るようとすると、たしかき捜査等に支障を及ぼすおそれがある」と判断できる場合は、警察等に協力して、顧客情報等を提供しても、違法ではありません。
以上の手順を踏まず、たんに協力要請があったので、顧客情報を提供したという場合は、違法になります。