コラム
不動産 22 隣人に、難しい人・怖い人がいたとき
2011年9月18日 公開 / 2012年8月17日更新
1難しい人
大阪高裁平成16.12.2判決を紹介します。
(登場人物)
甲・・・売主
乙・・・難しい人
丙・・・売主側仲介業者
丁・・・買主側仲介業者
戊・・・買主
(背景)
甲は西隣の住人乙から「子供がうるさい。」と怒鳴られたり、洗濯物の水をかけられる、泥を投げつけられるなどの経験をし、子供部屋を東端に移動するなど、隣人を意識した生活をしていたのですが、その土地建物を売ることにしました。
甲は、丙に土地建物の売却の仲介を依頼しましたが、その際、乙のことを知らせ、買主になる人にそのことをよく説明しておくようにと伝えました。
丙は、丁に、そのことを伝えました。
しかし、丙は、戊にはそのことを知らせず、戊は難しい隣人がいることを知らず、土地建物を購入し入居しました。
戊は、その土地建物を購入する前に、丁には「同じ子供を持つ親として聞いておきたいのですが、近隣の環境に問題はありませんか。」とまで質問しているのですが、丁は「全く問題はありません」と答えているのです。
また、甲は、契約のとき、戊には乙とのことを話しませんでした。
(責任)
丁に、説明義務違反の責任があるのは当然ですが、甲と丙に責任があるかどうかが問題になります。
判決は、甲や丙には、戊が土地建物を購入して入居したときは、乙との間にトラブルが生ずる可能性が高く、その程度も著しいこと、そのときは戊が居住するのに支障を来す恐れがあったのだから「その恐れがあるような事情についての客観的な事実について説明する義務があった」として、損害賠償を命じました。
(損害の内容)
戊がそこに2年半生活した事実から、土地建物の減損分(乙の存在が減損原因)を購入価格2280万円の20%に相当する456万円としました。
2怖い人
東京高裁平成19.12.25判決事案です。
①甲は、5630万円で宅地を購入し家を建てようとしたとき、隣家の乙(警察からの情報では、暴力団関係者の可能性ある人物)から、脅迫的言辞をもってそこに家を建てさせないと言われ、家を建てることが出来なくなりました。
②そこで、甲はこれを「隠れた瑕疵」だと主張して、売買契約の解除を理由に売主に対し、売買代金の返還請求訴訟を起こしました。
④一審判決は、「隠れた瑕疵」を認めましたが、その瑕疵は「売買の目的が達成できないほどの瑕疵とは認められない」として契約の解除は認めず、土地購入代金の30%の減価があるとして、1551万円の限度で請求を認めました。
⑤高裁判決は、乙からの建築禁止部分が宅地全体に及んでいるものではなく、乙の建築禁止要求部分を除いた部分を利用して建物を建築することは可能であることを考慮すべきだとして、宅地の減価を、15%であるとして、775万5000円に変更しました。
高裁が、“怖い人”の存在を瑕疵と認定した理由
「瑕疵」には、・・・「目的物の通常の用法に照らし、一般人であれば誰もがその使用の際に心理的に十全な使用を著しく妨げられるという欠陥、すなわち一般人に共通の重大な心理的欠陥がある場合も含むと解するのが相当である。」
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