遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 株主は誰か明確なのか?
中小企業の経営者は、多くの場合、自分で経営している企業を、株式会社か特例有限会社にしているものと思われます。そして、創業者が自社株の一部を生前、推定相続人や第三者の名義にしているケースもあります。そのような場合、はたして誰が株主なのかが明確でない場合も生じますので、自分の死後の争いを避けるために、遺言の中で、株主を明らかにしておくことが必要になる場合があります。
2 遺言文例
私が創業した○○株式会社には、株主名簿がないため、株主が誰かが争いになる可能性があるが、同社の平成○○年○月期の法人税の申告書添付別表2に記載している株主が株式数とともに真の株主であることを、この遺言書で明らかにしておく。万一事実がそれに相違しているとしても、もともと同社は私が創業し同社の株式は私が100%保有していたものであるから、前記別表2記載の株主に、同表記載の株式を生前贈与したか、遺贈もしくは相続させたものと理解して欲しい。
3 実際の訴訟で決め手になった遺言条項
事業年度によって異なる、法人税申告書別表2に記載された株主や株式数のうち、いずれの年度の申告書別表2が正しい株主や株式数なのかが争われた訴訟事件で、創業者が書いた遺言書の内容が決め手になった事件があります。
前記遺言文例は、そのときの遺言条項に若干手を加えたものです。