自治体のする契約 2 私法上の契約と公法上の契約
国や地方公共団体が、国民や住民からの「許可」の申請を受けて「許可」した場合、許可は一般に行政処分であるので、その許可に違法な瑕疵があるとき、常に、不服審査や行政事件訴訟の対象になるかが問題になった事件があります。
2 国有普通財産の払い下げに関する最高裁判決
大蔵大臣が物納された国有普通財産として管理していた土地をAに「払い下げの許可」を与えたことにより、Bがその行為に違法の瑕疵があるとして取消訴訟を起こした事件で、最高裁昭和35.7.12判決は、国有財産の払下は私法上の売買契約と解すべきであるとして、これに対する取消訴訟は却下されるべきものと判示しました。
3 許可の意味
国や自治体のする行為について許可という形式をとる場合がありますが、許可という用語を使っているから行政法で言う許可になるものではなく、取引の実態が対等な当事者間の契約であれば、公権力の行使としての行政処分にはなりません。
4 似た事例
似た事例は、公営住宅の入居「許可」などがありますが、これも行政法上の「許可」ではなく、賃貸借契約でしかありません。
参照
国有財産とは、「国の負担において国有となつた財産又は法令の規定により、若しくは寄附により国有となつた財産」です(国有財産法2条)。
国有財産には、行政財産と普通財産があります(3条)。
⑴ 行政財産には
①公用財産(国において国の事務、事業又はその職員の住居の用に供し、又は供するものと決定したもの)
②公共用財産(国において直接公共の用に供し、又は供するものと決定したもの)
などがあり、
行政財産は、貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又は私権を設定することができません(18条)。
⑵ 普通財産とは、行政財産以外の一切の国有財産をいいます。
普通財産は、貸し付け、管理を委託し、交換し、売り払い、譲与し、信託し、又は私権を設定することができます(20条)。
払い下げとは、ここでいう「売り払い」で、売買契約であるのです。