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イラスト相続 14 寄与分が認められる場合

菊池捷男

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①被相続人の事業に関する労務の提供
②財産上の給付
③被相続人の療養看護
④その他の方法
により、「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」場合です。

最高裁判所事務総局家庭局「改正民法及び家事審判法規の解釈運用について」によれば、
ア 被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献は寄与分とはみない。
イ しかし、相続人に通常期待される程度を超えた貢献や寄与がある場合は、寄与分とみる。
ウ 相続人に通常期待される貢献という場合、相続人による立場の違いも考慮される。例えば、相続人である配偶者と子が同じ程度の家事労働による寄与をしたとしても、配偶者は協力扶助義務の範囲内のものと認められるが、一般的な扶養義務ないしは互助義務を負うに過ぎない子については特別の寄与になると認めうる場合もある。
ことになります。
類型的は、
2 被相続人の事業に関する労務の提供ー家業従事型
裁判例、
ア 被相続人に代わって医療法人の経営に貢献した子に相続財産の3割(大阪高決昭54.8.11)
イ 約25年間家業に従事した子に1割の寄与分(福岡家小倉支審昭56.6.18)
ウ 農業後継者として家業に従事し被相続人の扶養にあたった子に1000万円(全遺産の3.7%程度)(千葉家一宮支審平3.7.31)
エ 農業後継者の寄与分を遺産の評価額の50%(横浜家審平6.7.27)
オ 農業従事期間中、「人力による農作業標準賃金の1日あたりの単価に、年間の作業日数を60日、生活費として40パーセントを控除することにして、寄与分を金額で算出(盛岡家一関支審平4.10.6)

3 財産上の給付ー共働き型・出資型
ア 被相続人である夫もサラリーマン、妻もサラリーマンであり、それらによって得た収入で、宅地、建物を購入したケースで、妻の寄与分を82.3%(和歌家審昭59.1.25)
イ 被相続人が創業した株式会社が経営危機に陥ったときに資金援助をした相続人について、被相続人の遺産の20%(高松高決平8.10.4)

3 被相続人の療養看護
親に昼食と夕食を届けるほか日常的な世話を行っていた段階では、寄与分にはならないが、認知症の症状が顕著に出るようになったため,子が親の3度の食事を取らせ常時見守りや排便への対応をするようになって以降は特別の寄与になり、1日当たり8000円の3年分876万円を寄与分とした大阪家審平19.2.8。
似た事案で、遺産の15%とした大阪高決平19.12.26決定。

4 その他の方法
⑴ 被相続人のための相続放棄
前記最高裁判所の解釈指針では、父の相続で、母が1人の子に多く相続させたいと思い、相続を放棄したため、その子が遺産全部を相続した後に、その子が死亡して相続が開始し、その母と妻が相続人になった場合、母は以前にした相続放棄をもって寄与分と主張することができるかという問題を想定して、その場合は、共同相続人間の衡平を図るという趣旨からその場合母の寄与分の主張を認める、としています。
なお、これは夫婦間の離婚事件での財産分与のケースですが、夫婦とも養子だったのだが、養親の相続のとき、養女(妻)が養親の財産を全部相続し、養子(夫)は何も相続しなかったケースで、東京高等裁判所平成5年9月28日判決は、これは実質的に見て夫が妻に養親の相続分を贈与して妻の財産形成に寄与したものとみることができるから、この夫婦の離婚にあたっては、養親の相続時の法定相続分を限度として、妻から夫に対して財産分与をすべきであると判示しています。

⑵ 財産管理
 長崎家諫早出張審昭62.9.1は、相続人が被相続人のために「土地売却にあたり借家人の立退交渉,家屋の取壊し,滅失登記手続,売買契約の締結等に努力したとの事実は認められるので,売却価格の増加に対する寄与はあつたものとみることができる。そして,その程度は,不動産仲介人の手数料基準をも考慮し,300万円と認めるのが相当である」としました。
⑶ 資産の運用は寄与分にはならない
 資産運用には利益の可能性とともに,常に損失のリスクを伴う。損失によるリスクは負担せずに,たまたま利益の生じた場合には寄与と主張することは、相続人間の衡平に資するとは,言いがたい(大阪家審平19.2.26)から。


 

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