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イラスト相続 12 持戻し対象になる贈与とはなにか?

菊池捷男

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1 特別受益
特別受益には、遺贈と贈与があります。

2 贈与の内容
持戻し計算の対象になる特別受益としての「贈与」は、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として」の贈与に限られます(民903)。

3 例
持参金、支度金、結納金などは「「婚姻若しくは養子縁組のための贈与」
不動産、自宅建築のための現金その他ある程度まとまった現金や金額の張る財産は「生計の資本としての贈与」

4 特別受益にならないものの例
・結婚式の費用(親の世間に対する社交上の出費としての性格を帯びるもの)
・相続人の借金の尻ぬぐい。
・学資(ただし、子供の間で不公平感がないものや、親の資産や社会的地位から当然だと思える範囲)
・扶養(病弱な子の将来の生活や病気療養費にあてるため贈与したまとまった現金などー東京家審昭47.11.15)。
・配偶者への財産の清算の意味と老後の扶養の意味での贈与

5 生命保険金
生命保険金については、相続財産にならないことを本コラムで解説しましたが、原則として、特別受益にもならないというのが判例です。しかしながら、生命保険金を受領した相続人だけが他の相続人に比べ有利になることについて、不公平になる面があることは否めません。そこで判例は、相続人間の「不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」は、生命保険金も特別受益になるとしています(最決平16.10.29)。

6 生命保険金が特別受益になる場合
①「生命保険金の受取人名義が途中で変更になっているが、変更の理由が明確ではない、変更の時期も不自然、新受取人は被相続人と同居していない、受取人が受け取る保険金額は合計1億0129万円、それに対し遺産の総額は1億0134万円」という事案では、その生命保険金は特別受益になる(東京高決平17.10.27)。
②妻が取得する死亡保険金等の合計額は約5200万円であるのに対し、相続開始時の遺産価額の61パーセントを占めること、被相続人と妻との婚姻期間が3年5か月程度であることなどを総合的に考慮して、死亡保険金は特別受益になる(名古屋高平決18.3.27)。

7 生命保険金が特別受益にならないとされた否定例
「死亡保険金が782万円、相続財産が6997万円の事案」では、保険金は特別受益とは言えない(最決平16.10.29)。


8 贈与の価額
贈与の価額は、相続開始時の時価で計算されます(民904)。
⑴ 金銭の場合は、贈与時の現金価値を相続開始時の価値に修正されます。
新潟家審昭41.6.9は、総理府(現内閣府)統計局編「家計調査年報」及び「消費者物価指数報告」に基づき贈与時の金額を相続時の金額に修正しました。
東京小売物価指数により、相続開始時までの倍率を乗じて換算評価した事例もあります。
学資が特別受益になる場合も、物価指数に連動させて、相続開始時の評価額の贈与があったとした例もあります。

⑵ 贈与財産が滅失した後で補償金を得た場合は、その補償金を贈与されたものとみて、物価上昇率で修正した金額が贈与財産の価額であるとした裁判例(大阪地判昭40.1.18)もあります。


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菊池捷男(弁護士)

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