遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 遺言文例」
遺言者は,〈本籍〉・○○○○(生年月日)を認知する。
2 認知制度
民法779条は「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。」と規定しています。嫡出でない子とは、法律上の夫婦でない男女の間に生まれた子のことで、「非嫡出子」と言われます。
⑴ 誰が認知をするのか?
民法779条は、父又は母が認知をすると書いていますが、母の認知は原則として必要ありません。最高裁昭和37.4.27判決は、母と非嫡出子の関係は、原則として母の認知をまたず、分娩の事実だけで当然に発生する、と判示しています。
ですから、認知をする者とは“父”だけになります。
⑵ 認知能力
民法780条は「認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。」と規定していますので、“父”であれば、いつでも認知が出来ます。
⑶ 認知の方式
民法781条1項は「認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。」と定め、2項で「認知は、遺言によっても、することができる。」と定めていますので、遺言で認知をすることも可能です。
⑷ 成年の子の認知には本人の同意が要る。
民法782条に「成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。」と定めているからです。
⑸ 胎児を認知する場合は、母の同意が要る。
民法783条1項で「父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。」と定めているのです。
⑹ 死亡した子の認知は、代襲相続人がいるときに限り、認知ができる。
民法783条2項は、「父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。」と定め、①死亡した子は原則として認知できないこと、②代襲相続人がいる場合は、認知が出来ること、③その場合でも、代襲相続人が成年者である場合は、⑷の原則どおり本人の同意が要ることとしているのです。
3 認知は子からも請求できる
民法787条は「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りでない。」と定めているとおりです。