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相続 121 遺留分減殺請求が許されない場合もある

菊池捷男

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例 名古屋地裁昭和51.11.30判決事案
遺留分権利者は、A及びBという養子夫婦です。
この養子夫婦は、養母Cと養子縁組を結ぶや否や、Cに対し、所有不動産の全部を夫婦に所有権移転の名義書替をするように迫り、Cがこれを断ると、高声をもって罵倒したり、殊に夫のAは乱心者のようにキセルの首で食卓を殴ったり、ステッキを振廻すなどの乱暴をしたあげく、Cに対し「親でもなければ、子でもない。」と暴言を吐き、Cを見捨て、同人1人を残して、勝手に他へ転居してしまいました。爾来25年の間、この夫婦と養母のCはCが死亡するまで1度として音信はありません。実質的にはAB夫婦と養母のCとの間の養子縁組は破綻していたといえる関係でした。

一方、遺留分減殺請求を受けたのは、同じCの養子のDです。
Dは、当初は、嫁入前の行儀見習としてCの許に奉公に上ったものです。Cよりその忠実・従順な性格を愛されて7年間、Cの世話をしてきました。そして結婚により退職をしたのですが、70才近いCが前述の養子夫婦AとBに見捨てられた後は、夫が応召して留守だった家にCを引きとっと世話をするようになったのです。空襲の下での生活が困難になったとき、Cを連れ実家に疎開し、疎開先ではCの神経痛、高血圧、喘息性心臓病の持病の治療費を夫の勤務先からの給料、Dの和裁の内職、Dの実家からの援助等によってまかなって、Cの世話をしてきたのです。やがて、夫が復員してきましたが、Dは、DがCの世話をすることを喜ばない夫と離婚までしてさらにCの世話をし続けました。そしてその後Cに乞われて養子縁組の届出をした者です。

このような関係で、養母Cが全財産をDに相続させる旨の遺言を書いてくれ、DがCの遺産のすべてを相続したのですが、これを知ったA及びBからDに対し遺留分減殺請求をしてきたのです。
この件で、裁判所は、AとBからの遺留分減殺請求は権利の濫用になり許されないと判示しました。

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菊池捷男(弁護士)

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