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相続 114 被減殺者の遺留分が侵害される結果になる場合はどうなるか?

菊池捷男

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1 問題
遺留分権者が、遺贈を受けた相続人や贈与を受けた者に対し、遺留分減殺請求をした場合で、その相手方とされた「遺贈」の受遺者(相続分の指定や遺産分割方法の指定を受けた者を含む)や、「贈与」の受贈者(遺留分を有する相続人に限られる)が、それに応えると、自分の遺留分が侵害される結果になる場合というのはあり得ることです

2 例
①被相続人が3人の子を残して死亡した。
②被相続人は3人の子のうちAに、生前9000万円の贈与をしていた。
③相続開始時、相続財産は3000万円あった。
④被相続人は、遺言で3000万円の財産をBに全部相続させる旨の遺言を書いていた。
⑤債務はない。
という事案で考えてみます。
このケースでは、遺留分算定の基礎となる財産額は、被相続人が相続開始の時に有していた財産3000万円+Aに生前贈与した財産の価額9000万円=1億2000万円です。
そして、何ももらえなかったCの遺留分は、遺留分算定の基礎となる財産額1億2000万円(d)×遺留分の割合1/2×法定相続分1/3=2000万円になります。
そして、遺留分侵害額は、遺留分の額2000万円-相続によって得た財産0+負担すべき相続債務の額0=2000万円です。
そこで、その金額を、民法1033条「贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。」との規定により、遺贈から減殺していきますが、遺贈はBへの3000万円ですので、Cは、Bに対して遺留分減殺請求をすることができます。Bは遺贈でもらった財産が3000万円ありますので、Cに2000万円を返すことは物理的には可能です。しかしながら、Bにも、B本来の遺留分2000万円がありますので、自分が遺贈してもらった3000万円からCの遺留分2000万円を返しますと、残りが1000万円となり、自分の遺留分を侵害してしまう結果になります。
問題は、このような結果になっても、理屈通り、BはCからのからの遺留分減殺請求に応じなければならないのか?ということです。

3 最高裁判決
最高裁平成20.2.26判決は、「相続人に対する遺贈が遺留分減殺の対象となる場合においては,右遺贈の目的の価額のうち受遺者の遺留分額を超える部分のみが、民法1034条にいう目的の価額に当たるものというべきである。けだし、右の場合には受遺者も違留分を有するものであるところ、遺贈の全額が減殺の対象となるものとすると減殺を受けた受遺者の遺留分が侵害されることが起こり得るが、このような結果は遺留分制度の趣旨に反すると考えられるからである。そして、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言による当該遺産の相続が遺留分減殺の対象となる場合においても、以上と同様に解すべきである。」と判示し、その場合は、自分の遺留分を超えてまで減殺に応ずる義務はないことを明らかにしました。当然と言えば、当然の判決だと思います。

4 説例の回答
前記説例の回答は、CはBに対しては、侵害された遺留分減殺請求2000万円のうち1000万円しか減殺請求が出来ない(それを超えるとB自身の遺留分を侵害することになるから)。残りの1000万円はAの贈与分から減殺してもらうことができる(遺贈の次に贈与からの減殺請求ができるから)、ということになります。

5 もう1つの例
相続人が子であるABCDの4人、遺産総額が4000万円、遺言により、Aが2500万円、Bが1000万円、Cが500万円を相続したが、Dは何も相続しなかったという場合で、Dが遺留分500万円について民法1034条の「遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。」により、ABCに対し、遺留分減殺請求をしますと、Cの遺留分を侵害してしまいます。Cが遺言により取得したものが、遺留分と一致する500万円でしかないからです。ですから、この場合はCを除くABに対して「その遺贈の価額の割合に応じて減殺する」ことになります。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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