遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 不動産の譲渡の場合
不動産が二重に譲渡されますと、先に移転登記を受けた買主が不動産を取得し、登記をしてもらえなかった買主は不動産を取得できません(民法177条)。この場合は、登記が対抗要件になるからです。
2 相続分の譲渡の場合
相続分の譲渡については、登記の制度はありません。
通知などの制度もありません。
ですから、先に相続分の譲渡契約を結んだ者が、後で相続分の譲渡契約を結んだ者に優先することになります。
和歌山家庭裁判所昭和56.9.30審判は、共同相続人間において相続分が二重に譲渡された事案の中で、「相続分の譲渡は、その旨の通知又は登記等がなくとも他の相続人に対抗し得るから、相続分の譲渡が有効になされた後、他の相続人に二重に譲渡されても、後の譲渡は無効である。」と判示しております。