遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 意義
共同相続人がいて、その中の一部の人が第三者に相続分を譲渡しますと、相続人という特定の範囲の人的関係者群の中に、そうでない者が入ってきて、被相続人の財産について分割を求めることができることになりますが、これは決して望ましいものではありません。そこで、民法905条1項は「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」ことにしたのです。ただし2項で「前項の権利は、1箇月以内に行使しなければならない。」ことになっています。
2 相続人が他の共同相続人に、相続分を譲渡した場合は、取戻権はない
相続分の取戻権は、共同相続人の中に第三者が入ることを阻止するための制度ですから、相続分が他の相続人に譲渡される場合は、これを阻止する必要はありません。したがって、この場合は、相続分の取り戻しは認められません。民法905条1項も「第三者に譲り渡したとき」と譲受人を限定しているのです。