遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 相続分の譲渡の意味
相続は、被相続人が有していた権利・義務を、相続人が包括的に承継することです。(これはコラム「相続 1」で説明しました。)
相続分とは、その“割合的な一部”のことです。
権利・義務の割合的一部という観念は、他にも、株式会社における“株式”等があります。
ですから、相続分の譲渡というのは、このような相続人の地位を譲渡することになるのです。
2 相続分の譲渡は、法的に可能なのか?
民法905条は「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」と定めていますので、相続分の譲渡は可能です。
3 遺産分割後にも、相続分の譲渡は可能か?
いいえ。遺産分割をしてしまいますと、相続分は消滅します。
遺産分割により、各相続人は、それまで有していた相続分が、個々の相続財産上の権利に形が変わりますので、もはや相続分なるものはなくなるのです。
ですから、遺産分割後は、相続分の譲渡はできません。
民法905条も「遺産の分割前に・・・」と定めているのは、その意味です。
4 相続分の譲渡には、方式が要求されるのか?
いいえ。相続分の譲渡は、譲渡人である相続人と譲受人である相続人又は第三者が、売買契約や贈与契約などの契約を結んでしますが、方式は要求されません。
口頭の契約だけでも成立します。ただ、口頭による契約というのは、その契約の成立や内容が争いになったときに証明できないという難点がありますので、通常は書面でなされます。
5 相続分の譲渡を第三者に知らせる登記などの制度はあるのか?
ありません。