遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 趣旨
民法908条は「被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め・・ることを第三者に委託することができる。」との規定を置いています。
これは被相続人が自ら相続人らが相続する遺産の内容を決めるのではなく、第三者に決めることを委ねる遺言事項です。
2 第三者は相続人であってはならない
東京高裁昭和57.3.23判決は、「被相続人が遺言で遺産分割の方法の指定を委託しうるのは共同相続人以外の第三者であることを要し(民法908条参照)、共同相続人中の一人に遺産分割の方法の指定を委託する遺言は指定の公正が期待できないから無効であると解するのを相当とする」と判示しています。
3 遺言文例
私は、私の信頼する○山△夫に、私の遺産分割の方法を決めることを委託する。
○山△夫は、次に書く私の希望に沿って、遺産分割の方法を決めていただきたい。
長男が会社の事業を引き継いでくれる場合は、長男には、長男やその家族の分を含めて○□株式会社の発行済み株式総数の過半数が取得できるように。
二男が妻と同居するつもりがあるのなら、自宅は妻と二男の名義に。ただし共有持分割合の決定は○山△夫に委ねる。
長女はそれ以外の財産の中からその希望するところを優先的に。