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相続 79 遺産分割協議の結果、債権者が害されるときは、詐害行為になるか?

菊池捷男

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1 問題
親には財産がある。子には財産はない。親が亡くなり子がその財産を相続することになった。子の債権者は、このときとばかり、子から債権を回収しようとする。しかし、子は他の共同相続人との遺産分割協議で、自分の取り分を0とする合意をしてしまった。かくして、子の債権者はあてがはずれてしまった。しかし、待てよ。子がした、このような債権者を害する遺産分割協議は許されるのだろうか?
債権者としては、そのような詐害行為的な遺産分割協議を取り消すことはできないのか?

2 答
詐害行為になり、債権者から取り消すことができます。
最高裁平成11.6.11判決は、「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。」と判示し、遺産分割協議も詐害行為になりうると判示しました。

3 取り消した後の処置
相続人の債権者が、相続人のした遺産分割協議を、裁判によって詐害行為を理由に取り消しますと、遺産分割がなされていない状態に戻ります。そこで、相続人の債権者は、不動産については、相続人に代位して相続登記をし、それを差し押さえる等ができるのです。
被相続人(上記の例では父親)名義の預金のうち、債務者である相続人(上記の例では子)の相続分についての差押えも無論出来ます。父の預金が100万円、子の相続分が1/4の場合は、25万円の差押えが可能になるということです。

4 相続放棄は詐害行為取消の対象にはならない
自分の取り分を0とする遺産分割協議をすると、その相続人の債権者は詐害行為取消権を行使できますが、経済的には同じ効果になる相続放棄も詐害行為取消権の対象になるのか?
最高裁昭和49.9.20判決は、「相続の放棄のような身分行為については、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である」と判示しています。

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