遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
大審院昭和18.3.19判決は、「妾契約の維持継続を条件」とする遺贈は公序良俗に反し、無効になると判示しましたが、最高裁昭和61.11.20判決は、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら女性の生活を保全するためのものであり、遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなどの事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するとはいえない、と判示していますので、全財産の遺贈など、残された遺族に過酷になるような遺贈ならともかく、不倫相手への遺贈が問題になるケースは少ないと思います。
それより、法律実務の世界では、妻を亡くした、徘徊癖のある83歳の中程度の認知症男性が、息子、娘の知らない間に、また、息子、娘が知らない女性との婚姻届出をなし、その直後に、「全財産を妻に相続させる。」との遺言を書く等、遺言能力をめぐる事件の方が、多いように思えます。